よみもの・連載

捜し物屋まやま2

第一話後編

木原音瀬Narise konohara

 近所にあるコンビニで弁当を買ってきて昼飯をすませたあと、段ボールが積み重なる部屋の中、男五人が膝をつき合わせて座った。松崎(まつざき)が捜し物を依頼したのはセンセとその弟のコンビだが、休みでたまたま居合わせたという縁で、徳広(とくひろ)と三井(みつい)もなし崩し的に「虐(いじ)めっ子からのブローチ奪還」計画に加わっている。
「幽霊の子供に会って、誰にブローチを取られたか直接聞いた方が早いと思うんだよね。で、俺らがその虐めっ子に交渉して返してもらって、幽霊の子供に渡して終了って感じかな」
 最初にセンセが大筋のルートを作った。
「まずはその子を見つけないとですね。母子家庭だったなら、母親が亡くなった後は、父親か親戚が引き取るか、児童養護施設に預けるかのどれかでしょうね」
 三井は一人正座のまま腕組みする。
「センセ、そこんトコ幽霊に聞けないっすか?」
 ウーンとセンセが唸(うな)る。すると弟がセンセににじり寄ってぴたりとくっついた。全方向に対応が塩な弟も、お兄ちゃんは大好きらしく、スキンシップが濃い。
「元気でいるけど、そこがどこなのか女にもよくわからない……ってさ」
 何となく幽霊は全部知ってるんじゃないかと期待していたが、わからないものはわからないらしい。外国人の幽霊だし、日本語が苦手だったら、日本の社会システムに疎(うと)くても無理はないので、まぁ仕方ない。
「不動産屋に聞いたら、前に住んでた住人の子供の行方とか知ってるんじゃないすか。教えてもらえませんかね〜」
 センセに聞いたのに、徳広が「個人情報だから無理でしょ」とサクッと話を終わらせる。
 全員が考え込む。人捜しっていうのは、意外に難しいのかもしれない。どうやって捜せばいいのか……近所の小学校で聞き込みするか? けど自分たちは女の幽霊はおろか、その子供の名前すら知らないのだ。
 それでも、どうにかして霊との同居から解放されたい。悶々(もんもん)としているうちに、センセの弟と目が合った。弟が右を指さす。反射的に顔を向けたが、何もいない。背筋がゾワッとする。
「あっ、あの白雄(しお)サン。何かそっちにいるんすか?」
 首を横に振り、もう一度右を指さす。
「なっ、何かいるんすよね」
 弟がセンセの肩を掴(つか)んだ。するとセンセが顔を上げてきょとんとした顔で「隣」と口を開いた。

プロフィール

木原音瀬(このはら・なりせ) 高知県生まれ。'95年「眠る兎」でデビュー。ボーイズラブ小説界で不動の人気を博す。
ノベルス版『箱の中』『檻の外』が’12年に講談社より文庫化され、その文学性の高さが話題に。
『美しいこと』、『秘密』、『吸血鬼と愉快な仲間たち』シリーズ、『ラブセメタリー』、『罪の名前』など著書多数。

登場人物

間山和樹(26) 「捜し物屋まやま」所長兼小説家。白雄とは血の繋がらない兄弟。

間山白雄(26) 捜し物屋スタッフ兼マッサージ師。不思議な能力があって・・・・・・。

徳広祐介(38) ドルオタ弁護士。捜し物屋と同じビル内の法律事務所で働いている。

三井走(36) 天涯孤独の元引きこもり。現在は徳広の勤め先で事務員をしている。

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