よみもの・連載

捜し物屋まやま2

第二話後編

木原音瀬Narise konohara

 小学校に通いはじめてから、男なのにスカートをはいたり、ピンク色の服や、レースのついた服を着るのはおかしい、変って言われるようになった。それだけじゃなくて「どうして髪の色が茶色なの?」「どうして目の色が薄いの?」「どうして外国人みたいな顔なの?」と聞かれた。
「どうしてお父さんがいないの?」
「どうしてお母さんは外国人なの?」
 どうして、どうしてばっかり言われた。ピンクとレースは変だって同じクラスの子は笑うけど、どんなに鏡を見ても自分にはすごく似合っているし、お店の大人はみんな褒めてくれる。それに男の子の服はかわいくないから大嫌いだった。
 お父さんがいないって虐(いじ)められたし、お母さんが外国人だ、ホステスだって虐められた。何をやっても虐められたから、スカートをやめて男の子っぽい服を着ても、きっとずっと虐められてたと思う。みんなに虐められても、ママは毎日「光、あいしてる」とキスしてくれた。
「光、カワイイ」
「光、すき」
「光、あいしてる」
 ママにいっぱい愛されているとわかっていたから、虐められても平気だった。それなのに、大好きなママはいなくなった。ママがいなくなって、もう誰も「光、あいしてる」って言ってくれない。悲しいのが大きくなって涙が出そうになったところで、白雄さんが部屋に戻ってきた。無言で絆創膏を和樹さんに差し出す。和樹さんは白雄さんの手を見て「もう血、止まってるじゃん。けど一応やっとくか」と絆創膏をペタリと貼り付けた。
 和樹さんが白雄さんを見て、そしてこっちに振り向いた。
「何かさぁ、白雄と光君って似てね?」
 似てると思わないから、首を横に振る。白雄さんはなぜかフッと鼻先で笑った。
「全体のトーンっていうか雰囲気が、同種って気がするんだよな。単純に二人ともイケメンってだけかもしんないけど」
 テーブルの上のスマホから、ポロン、ポロンと音楽が聞こえてくる。
「あ、ちょっとごめんな」
 和樹さんはスマホを鷲(わし)掴みにして、部屋の隅に行く。するとちょっと離れたところにいた白雄さんが近づいてきた。じっと自分を見下ろしてくる。
 そして、白雄さんは、自分の唇を指さした。和樹さんに「唇を読む」と聞いていたから、何か言いたいことがあるのかなと思って、じっと白雄さんの唇を見ていると、ゆっくり動いた。
『か、え、れ』

プロフィール

木原音瀬(このはら・なりせ) 高知県生まれ。'95年「眠る兎」でデビュー。ボーイズラブ小説界で不動の人気を博す。
ノベルス版『箱の中』『檻の外』が’12年に講談社より文庫化され、その文学性の高さが話題に。
『美しいこと』、『秘密』、『吸血鬼と愉快な仲間たち』シリーズ、『ラブセメタリー』、『罪の名前』など著書多数。

登場人物

間山和樹(26) 「捜し物屋まやま」所長兼小説家。白雄とは血の繋がらない兄弟。

間山白雄(26) 捜し物屋スタッフ兼マッサージ師。不思議な能力があって・・・・・・。

徳広祐介(38) ドルオタ弁護士。捜し物屋と同じビル内の法律事務所で働いている。

三井走(36) 天涯孤独の元引きこもり。現在は徳広の勤め先で事務員をしている。

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