よみもの・連載

捜し物屋まやま2

第二話後編

木原音瀬Narise konohara

「なっ、なに。どうしたよ」
「足、痛い」
「痛いって、ジャングルジムから落ちた時に、どっかぶつけたか?」
「つま先、痛い」
 伊緒利ちゃんに「靴、脱いでみろ」と言われたから両足とも脱いだ。右も左もつま先が全部赤くなり、右の足の親指の爪は紫色になっていた。
「うわっ、爪が死んでんぞ。中学のマラソン大会の時に、爪がこんなんなってる奴がいたけど……」
「……靴、きつい」
 伊緒利ちゃんは、つま先とスニーカーを交互に見たあと「お前、歩ける?」と聞いてきた。素足のまま立ち上がった。靴を履かなかったらつま先は痛くない。けど……。
「足の裏、痛い」
 伊緒利ちゃんは「ですよね〜。仕方ねえなあ」っておんぶしてくれた。おんぶとか、久しぶりだ。伊緒利ちゃんの背中は硬くて、やっぱりママとは違ってて、もしかしてパパがいたらこんな感じなのかなと思いながら、伊緒利ちゃんの首に額をぴったりくっつけた。ちょっと煙草みたいな匂いがする。
 コンビニまで行く。伊緒利ちゃんが買い物している間、外で待ってたらすぐに出てきた。ウエットティッシュで両足を拭いて、紫色になった爪を包帯でそっと巻いてくれる。
「この爪なぁ、べろってはがれると思うけど、また新しいの生えてくるから、気にすんな」
 包帯を巻いてから、またおんぶで伊緒利ちゃんは歩く。アーケードのある商店街に入ってすぐのところにある小さな靴屋、店の前に置かれたワゴンセールのサンダルの前で足をとめた。
「サンダルだったら、歩けるだろ。自分で選べよ。買ってやるからさ」
 伊緒利ちゃんの背中から降りて、さっきまで履いていたスニーカーの上に立ってワゴンを覗(のぞ)いた。いくつか履いてみて、赤を選んだ。
「その色でいいのか?」
「ピンクがいいけど、大きいのないから」
 そう言ったら、伊緒利ちゃんが店の中に入って、頭のはげたおじさんに、店頭に置いてあるサンダルのピンクはないかって聞いた。そしたらピンクが出てきて、嬉しかった。
 伊緒利ちゃんははげたおじさんに「この子の足に合うスニーカーないすかね?」と聞いた。
「前の靴が小さくなって、指を痛めたみたいなんすよ」

プロフィール

木原音瀬(このはら・なりせ) 高知県生まれ。'95年「眠る兎」でデビュー。ボーイズラブ小説界で不動の人気を博す。
ノベルス版『箱の中』『檻の外』が’12年に講談社より文庫化され、その文学性の高さが話題に。
『美しいこと』、『秘密』、『吸血鬼と愉快な仲間たち』シリーズ、『ラブセメタリー』、『罪の名前』など著書多数。

登場人物

間山和樹(26) 「捜し物屋まやま」所長兼小説家。白雄とは血の繋がらない兄弟。

間山白雄(26) 捜し物屋スタッフ兼マッサージ師。不思議な能力があって・・・・・・。

徳広祐介(38) ドルオタ弁護士。捜し物屋と同じビル内の法律事務所で働いている。

三井走(36) 天涯孤独の元引きこもり。現在は徳広の勤め先で事務員をしている。

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