連載
アイランド・ホッパー
2 礼文島 中澤 日菜子 Hinako Nakazawa

 お礼を申し上げ、会議所を辞去。ちょうどやってきた稚内行きのフェリーに駆け込む。
 船上で改めて検索すると、出るわでるわ桃岩荘ネタ、なんとウィキペディアにまで存在する。
「せっかくだから今度泊まってみようか、桃岩荘」
 遠ざかる島かげに思いを馳せながら横に立つM嬢に微笑みかける。ゆったりと微笑み返したM嬢は、だがきっぱりと「遠慮しておきます」、こたえるのであった。
 最後にバスガイドさんに教わった耳寄りな情報をひとつ。
 礼文島では毎年六月〜九月、昆布干しの住み込みアルバイトを雇うそうだ。告知は三月ごろ、おもにネットで。酷暑の本州を避け、豊かな海の幸と愛らしい花々に囲まれて働く夏も、なかなかよいものではなかろうかと思いを馳せるわたしであった。



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〈プロフィール〉
中澤 日菜子(なかざわ ひなこ)
1969年、東京都生まれ。慶應義塾大学 文学部卒業。日本劇作家協会会員。
2013年に『柿の木、枇杷も木』で第八回小説現代長編新人賞を受賞。翌年タイトルを『お父さんと伊藤さん』に改め同作で小説家デビュー。16年映画化された。最新刊は「ニュータウンクロニクル」(光文社刊)。2017年11月号より小説すばるで長編小説「石灯る夜」を連載中。
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