連載
アイランド・ホッパー
3 八丈島 中澤 日菜子 Hinako Nakazawa

 つづいて定番「明日葉の天ぷら」。明日葉は八丈島の特産品で、「今日摘んでも明日には芽が出る」ほど生命力の強い草だ。独特の癖と苦みがあるけれど栄養価が高く、焼酎も明日葉茶で割れば二日酔いしにくいという。天ぷらは衣さくさくで、明日葉の苦みがちょうどよいアクセントになっている。

 刺身はお店のお任せ盛り。カジキに赤サバ(チビキ)、カンパチ。脂っこくないのに口のなかでとろけるのは鮮度がよいからだろうか。このお刺身につける薬味は島とうがらしと呼ばれる小さな青いとうがらし。半分にちぎって醤油に漬けておくと程よく辛さと香りが移り、地の魚とよく合った。これも名物、ムロアジのくさやもいただく。「新島ほどはくさくない」と島のひとは言うが、やはり結構パンチの効いたニオイがする。

 焼いた魚も食べたいねということになり、オナガのかぶと焼きをオーダー。オナガはハマダイとも呼ばれる鮮やかなオレンジ色の魚だ。こんがり焼かれたかぶとは淡泊な白身で、身がみっしりと詰まっている。M嬢とふたり熱心にほじほじして食べた。

「ごちそうさまでした」店を出てふと夜空を見上げると、そこには満天の星ぼしが。南北に流れる天の川も、西の空に沈みかける北斗七星もくっきりと見える。明日もきっといい天気だ。星の光を浴びながらホテルまで帰った。


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〈プロフィール〉
中澤 日菜子(なかざわ ひなこ)
1969年、東京都生まれ。慶應義塾大学 文学部卒業。日本劇作家協会会員。
2013年に『柿の木、枇杷も木』で第八回小説現代長編新人賞を受賞。翌年タイトルを『お父さんと伊藤さん』に改め同作で小説家デビュー。16年映画化された。最新刊は「ニュータウンクロニクル」(光文社刊)。2017年11月号より小説すばるで長編小説「石灯る夜」を連載中。
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