連載
アイランド・ホッパー
4 軍艦島 中澤 日菜子 Hinako Nakazawa

 軍艦島の炭鉱は海面下約1キロに及ぶ海底炭鉱だ。幾すじも枝分かれした坑道は、まるで人体を走る血管のようにすみずみまで伸びている。勾配はきつく、ランプ以外の光はない。気温30℃、湿度は95%を超えるという悪条件のなか、一日8時間、三交代制で石炭は掘り進められていったのだ。


 採炭の苦労に思いを馳せながら、風化の進む建物群を見て回る。第三広場からは大正5(1916)年に建てられた日本最古の鉄筋コンクリ高層アパート「30号棟アパート」が目の前に見える。黒く変色し、台風の直撃によって壁や階段が崩落している。だがかつてはここで大勢の家族が暮らし、日々の生活を営んでいたのだ。「台風慣れ」した住民は屋上から高波見物に興じることもあったという。

「軍艦島での暮らしは決して楽なものではなく、また採炭作業は常に危険と隣り合わせでした。でもだからこそ住民同士の絆は強く、深かったのです。閉山後、島を離れてもその絆が弱まることはなく、現在でも旧島民による『同窓会』が開かれています」ガイドさんのことばを胸に刻みつつ、来た道を引き返し、船へと戻った。


 市内に戻り、お昼は長崎の生んだB級グルメ「トルコライス」をいただく。思案橋の近くにある老舗喫茶店「ツル茶ん」。レトロな内装で昭和な雰囲気のお店だ。ちなみにトルコライスとは一枚のお皿の上にピラフ、ナポリタンスパゲティ、そしてデミグラスソースのかかったトンカツの乗ったボリューミーかつハイカロリーな食べものだ。名称の由来には諸説あるがトルコとは関係ないらしい。


「ツル茶ん」には「真正トルコライス」から「Ryоmaトルコ」まで実に10種類ものヴァリエーションがあり、悩んだすえわたしは「トルコ三四郎」をチョイス。これは牛フィレ和風ステーキにピラフ、和風クリームスパゲティを合わせた和洋融合トルコ。お肉が柔らかく、あさりの入ったクリームスパが優しいお味だった。
 食後はアイランドホッパー名物「M嬢のご当地ソフトクリーム食べ歩き」へ。グラバー坂に並ぶお土産屋さんでM嬢は「ざぼんソフト」、そしてYさんは「カステラソフト」を食す。以下お二人の実食レポート。


M嬢「さわやかで優しい柑橘系の香りと味が広がるが、甘すぎるのが難点」
Yさん「カステラの包みを開けた時にふわっと香るあの匂いが楽しめる。ザラメが敷いてあればなお良し」ご当地ソフト、奥が深い……



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〈プロフィール〉
中澤 日菜子(なかざわ ひなこ)
1969年、東京都生まれ。慶應義塾大学 文学部卒業。日本劇作家協会会員。
2013年に『柿の木、枇杷も木』で第八回小説現代長編新人賞を受賞。翌年タイトルを『お父さんと伊藤さん』に改め同作で小説家デビュー。16年映画化された。最新刊は「ニュータウンクロニクル」(光文社刊)。2017年11月号より小説すばるで長編小説「石灯る夜」を連載中。
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