連載
アイランド・ホッパー
5 座間味島 中澤 日菜子 Hinako Nakazawa

 首里城をぐるり一周したあとは、庶民の生活の場である牧志(まきし)公設市場へ向かう。国際通りに隣接するこの市場では本体の建物を取り囲むように、約200もの商店が軒を並べている。服飾品を売る店や琉球菓子をあつかう店、宝飾品店や八百屋、魚屋など業種ごとに固まって形成された路地は、いつの間にか違う路地に繋がり、さながら迷宮のようだ。その「ごった煮かげん」は東南アジアの市場を彷彿とさせ、冷やかしで歩いているだけでもこころが浮き立ってくる。

 中心の公設市場は2階建て。1階では鮮魚や食肉がおもに商われ、2階はフードコートのような食堂街となっている。なかの一軒、サーターアンダギー専門店の「歩」は、かの林真理子さんが熱愛するお店だそうで、わたしも以前週刊誌で「いかにこのお店のサーターアンダギーが美味しいか」、氏が力説するエッセイを読んだ記憶がある。
「それはぜひとも食べなくてはです!」勢い込んで店に駆け込むM嬢。だがすぐにしおしおと戻って来て、「まだ4時過ぎだというのにすでに完売でした……」残念そうに首を振る。
「だいじょうぶ、まだ明日も明後日もチャンスはあるじゃない」落ち込むM嬢を励ますわたし。
「そうですね。明日再チャレンジします」ちから強く再戦を誓うM嬢であった。

 早めの夕食を取ろうということになり、市場を出て国際通りに戻る。通り沿いに歩くうち、名産の黒糖を使った「黒糖ソフトクリーム」を発見。「M嬢のご当地ソフトクリーム食べ歩き」の出番である。
「黒糖のパウダーが表面と中面と三層にかかっており、優しい風味が口の中に広がって美味。ただ、黒糖がソフトクリームに練りこんであるのかなと思っていたので、そこにじゃっかん物足りなさを感じた」そうである。



 2      次へ
 
〈プロフィール〉
中澤 日菜子(なかざわ ひなこ)
1969年、東京都生まれ。慶應義塾大学 文学部卒業。日本劇作家協会会員。
2013年に『柿の木、枇杷も木』で第八回小説現代長編新人賞を受賞。翌年タイトルを『お父さんと伊藤さん』に改め同作で小説家デビュー。16年映画化された。最新刊は「ニュータウンクロニクル」(光文社刊)。2017年11月号より小説すばるで長編小説「石灯る夜」を連載中。
Back number
7 天草
6 田代島
5 座間味島
4 軍艦島
3 八丈島
2 礼文島
1 桜島