連載
九州観光列車の旅
第二章 男と女の動き 西村京太郎 Kyotaro Nishimura

 津村と日下の二人の刑事は、すぐ千駄ヶ谷にある緒方検事の自宅マンションに向かい、三田村と北条早苗刑事の二人はKホテルに向かい、十津川を含めた三人は、霞が関の東京法務局に急行した。
 その時、日下刑事が、質問した。
「このいずれかの場所に、亀井刑事が、現れるかも知れません。その時には、どうしたらいいのでしょうか?」
 と、聞く。
 十津川は、
「決まっている。身柄を確保するんだ」
 と、言ってから、すぐ、
「現在、深夜に近い。この暗さの中で間違えたら、それこそ、警視庁の恥になる。だから、相手をしっかり確認してから、身柄を確保するように」
 と、付け加えた。
 一組がまず出発した。十津川と田中刑事、片山刑事の三人は、少し遅れて、東京法務局に向かった。
 警視庁からは歩いても十五、六分の距離である。十津川は、その短い距離を万が一に備えて、パトカーを飛ばした。
 東京法務局の前には、当直の若い検事が玄関先に出ていて、十津川たちを出迎えた。そのまま三階の部屋まで、案内する。
「ドローンが飛び込んできたところは、そのままにしてあります」
 と、若い検事が、言う。
 十津川と二人の刑事は、窓ガラスの破片と羽根の折れたドローンを、見比べた。
 十津川は、すぐ鑑識を呼んだ。
 これは遊びではないのだ。依然として、犯人の中に、亀井刑事がいる公算が大きい。その問題とも正面から、立ち向かわなくてはならないと、十津川は覚悟していた。
 目の前に壊れたドローンがあり、そのどこかに、亀井刑事の指紋が一つでも付いていたら、その時はどうしたらいいのか?
 十津川は、まだそこまでは、考えていない。
 十津川は、片山、田中の二人に、
「この壊れたドローンが、いったいどこで売られていたものなのか、そして、このドローンを買った人間がいたら、その人間の身元確認を、大至急やってくれ」
「もし、亀井刑事が、このドローンを買っていたら、どうするんですか?」
 と、田中刑事が、聞いた。
「その場合も、私に正確に、報告してもらいたい」
 と、十津川が、言った。



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〈プロフィール〉
西村京太郎(にしむら・きょうたろう)
1930年東京生まれ。63年にオール讀物推理小説新人賞、65年に『天使の傷痕』で江戸川乱歩賞、81年『終着駅殺人事件』で日本推理作家協会賞、2004年には日本ミステリー文学大賞を受賞。鉄道ミステリーの第一人者。
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