連載
九州観光列車の旅
第三章 特急いさぶろうと特急はやとの風2 西村京太郎 Kyotaro Nishimura
○新聞の政治面
 国会開催中。午前十時、官房副長官が昨日の発言について謝罪するも、辞職はせず。

 南九州市の市会議員三人が午後一時、突然、辞表を提出した。地元新聞が明日の朝刊で、この三人が家族旅行などを公費でまかなった事実を記事にすることを知っての行動で、辞表は受理される模様である。この三人は、保守系二人と革新系一人。


 京都発。一二時〇〇分。
 京都テレビのニュースが、問題になっている。京都在住の日本画家K・S氏は、自宅裏の国有林が全く手入れがされず、倒木がそのままになっていて危険なので営林署に善処を頼んだが、予算がない、人員がないといって、何もしてくれない。そこで、たまたまクラブで知り合った国務大臣に話したところ、その翌日、十人もの男たちがやって来て、忽ち裏山がきれいに片付けられてしまった。「日本はコネ社会」と、K・S氏がテレビで話したところ、国務大臣はそのクラブに行ったこともないし、K・S氏に会ったこともないと否定している。

○社会面
 福知山線の京都府内の踏切りで、午前十一時五分、十二歳のM・T君が下りの列車にはねられて死亡した。列車の運転士は踏切り内に、子供を発見し急ブレーキをかけたが、間に合わなかったと話している。

 東京上板橋にあるコンビニジャパンの上板橋店の店長N・Y氏(二八歳)が、午前九時になっても起きて来ないので、妻のSさんが起こしに行ったところ、首を吊って死んでいるのが発見された。N・Y氏は、残業続きでノイローゼ気味で、一週間前にも自殺を図ったことがあるという。労働基準局では、コンビニジャパンを労基法違反で調べることにしている。


 横浜市内で危険な遊び二件
 午前九時頃、横浜商店街で軽自動車から突然、アーチェリーの矢が発射され、同じく横浜市内に住む女性A・Sさん(三二歳)の腹部に命中、直ちに救急車で病院に運ばれたが、矢の先に毒が塗ってあり、重傷だが、手当てが早かったので、助かる見込みである。同じ日の午後十二時十分頃、山下公園でも、軽自動車から矢が発射され、たまたま公園に来ていた女子大生A・Aさん(二一歳)の左足に命中したが、こちらも手当てが早かったので、一命は取りとめている。警察は、悪質な行為と見て、殺人未遂容疑で捜査を始めた。


 バブル時代のキング、自殺
 バブルの時代に土地と株で大儲けをして、キングと呼ばれていたK・N氏(六五歳)が本日、北海道定山渓温泉で自殺しているのが発見された。
 K・N氏はバブルの頃、自宅の金庫に常に二億円から五億円の現金が入っていて、主として政治家に用立てていたといわれる。バブル期に、政治家に用立てた金額は、合計百億円という。バブルが消えたあと、ひそかに政治家が助けてくれるのを期待していたが、その代わりに出資法違反で刑務所に放り込まれてしまった。
 今回、定山渓温泉のRホテルに泊まっていたが、昨日の夕方、外出したが帰らないので、ホテルの従業員が探していたが、本日午前十時頃、近くの林の奥で、首を吊って死んでいるのが発見された。キングといわれた頃のK・N氏は、億単位の金を自由に動かしていたが、見つかった時の所持金は、わずかに一万八千円だった。

 東京湾内で衝突事故。漁船沈没し、三人行方不明。
 本日午前八時頃、千葉県君津の漁船、友海丸(一九トン)が第一海保近くで、タンカーの東海丸(九八〇トン)に衝突し沈没。三名の乗組員は行方不明になっている。

 これが翌日の新聞に載っていた事件の全てだった。
 どの事件もすでに完結している。


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〈プロフィール〉
西村京太郎(にしむら・きょうたろう)
1930年東京生まれ。63年にオール讀物推理小説新人賞、65年に『天使の傷痕』で江戸川乱歩賞、81年『終着駅殺人事件』で日本推理作家協会賞、2004年には日本ミステリー文学大賞を受賞。鉄道ミステリーの第一人者。
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第六章「亀井救出の道」2
第六章「亀井救出の道」
第五章「二つの力」2
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第四章「別件逮捕」2
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第三章 特急いさぶろうと特急はやとの風2
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第二章 男と女の動き2
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第一章 或る列車2
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