連載
九州観光列車の旅
第三章 特急いさぶろうと特急はやとの風2 西村京太郎 Kyotaro Nishimura

 しかし、十津川の想像が当たっているとすれば、この中の一つが終わっていないのだ。そして、それを終結する為に、犯人は動いたことになる。
 それを隠す為に、犯人は現職の刑事の子供を誘拐して、警察の注意をそちらに向けさせようとした。
 しかし、誘拐は重罪である。人質を釈放したとしても、重罪であることに変わりはない。
 そんな重罪を犯してでも、すぐ解決すべき問題が、犯人側にあったことになる。人質を釈放したのだから、その事件は犯人の思いどおりに解決したのだろう。
 十津川は、新聞に載っている事件をもう一度、一つ一つ見ていった。どれが答えなのか分からない。それどころか、これは勝手な思い込みかも分からないのである。
 そんな十津川の下に、亀井刑事が長男の健一が書いたメモを持ってきた。
「誘拐されていた時のことを、何でもいいから全て書き出せといって、健一に書かせたものです」
 と亀井が言った。
「誘拐犯人を捕まえるのが、お前の義務なんだから、全部思い出せといって書かせました」
「いや、もっと大事なことを、思い出してくれているかも知れないよ」
 と十津川は言った。

【つづく】



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〈プロフィール〉
西村京太郎(にしむら・きょうたろう)
1930年東京生まれ。63年にオール讀物推理小説新人賞、65年に『天使の傷痕』で江戸川乱歩賞、81年『終着駅殺人事件』で日本推理作家協会賞、2004年には日本ミステリー文学大賞を受賞。鉄道ミステリーの第一人者。
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第六章「亀井救出の道」2
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第五章「二つの力」2
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第三章 特急いさぶろうと特急はやとの風2
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