連載
九州観光列車の旅
第六章「亀井救出の道」 西村京太郎 Kyotaro Nishimura

「私は京都府警に、電話をしてみたんだ。どうして、こんな大きな事件が、解決しないのかとね。それに対して、今も、迷宮入りしたこの事件を担当している、三浦という警部が、私にこう言った。『失敗したのは、似たような事件だったので、二つの事件の犯人は、同一人に違いないと考えて、捜査を進めていった。その思い込みがいけなかったのかも知れない』とね。三浦警部は、こんなことも言った。『今になると第一の事件、第二の事件ともよく似た事件だ。また、少女が誘拐され、父親の刑事が死んでいる。それで自然に、捜査が慎重になった。その間に、時間が経ってしまった。それが、この事件を迷宮入りにしてしまった理由ではないかと、反省している』、そう言っていたよ」
 今度は十津川に対して、反論する者はいなかった。
「よく、似ていますね」
 と、三田村刑事が言い、北条早苗刑事が肯いた。
「当然警部は、五年前の、この事件は今回の事件とよく似ている。そう思って、いらっしゃるんでしょう?」
「京都府警の三浦警部の言葉が忘れられなくてね。彼が言うんだ。同一犯人だと思い込んでいたので、容疑者が二人になるかも知れないという考えを捨ててしまった。それは間違いだったのかも知れないと言った。だから、今度もわたしは同一犯人ではないと考えているんだ。それにもう一つ、素人が亀井刑事の息子健一君を誘拐、監禁したとは思えない。これは、プロでしかできない仕事だ。だから、そいつは、父親の亀井刑事と、息子をセットにして、二回、誰かに売ったんだ。だから、第一、第二の事件について犯人が浮かんでくるが、ブローカーの方は、浮かんでこない。同じことが、五年を隔てて起きたんじゃないかと考えているんだよ」
「しかし、われわれは、京都の事件を、捜査することはできませんよ」
 三田村が言った。
「分かっている。そこで、京都府警の三浦警部が、明日来てくれることになった。警視庁に呼ぶことはできないので、新幹線で午後六時前後に東京駅に着き次第、われわれは駅近くのカフェで彼に会って、京都で起きた事件の詳細を聞くことにする。これはあくまでも、京都と東京の刑事が、事件のことで会うわけではなくて、休み時間に、親交を深めるということにする」
 十津川は念を押した。



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〈プロフィール〉
西村京太郎(にしむら・きょうたろう)
1930年東京生まれ。63年にオール讀物推理小説新人賞、65年に『天使の傷痕』で江戸川乱歩賞、81年『終着駅殺人事件』で日本推理作家協会賞、2004年には日本ミステリー文学大賞を受賞。鉄道ミステリーの第一人者。
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