連載
九州観光列車の旅
第六章「亀井救出の道」2 西村京太郎 Kyotaro Nishimura

「たしかに、同じように考えている刑事もいます。三浦さんが言ったように、ここの事件でも、誘拐犯は、一人、誘拐した少年を使って人殺しを動かしている。そう考えると、簡単なんですが、誘拐犯も見つからないし、第二の事件の真犯人も分からない。そこで私は、こう考えているのです。三浦さんにも聞いてもらいたい。ここに誘拐ブローカーがいる。そのブローカーが金になる少年を誘拐した。その父親は、現職の刑事だ。そこで、ブローカーは刑事付きの人質で売った。ところが、最初の事件では助ける相手が病死してしまった。そこでブローカーは、この人質を他の人間に売りつけたのではないか? 一つの事件では儲からないので、売りつける相手を捜した。あるいは最初から用意しておいた。京都では最初の事件は、成功したが、二回目は、失敗した。東京の場合は、逆になっています。われわれは、容疑者を逮捕して尋問すれば、誘拐ブローカーも自然に見つかるだろうと思っていたんですが、いくら容疑者を尋問してその周辺を、調べても、誘拐ブローカーは見つからないのですよ。そうなると、同一犯というわれわれの推理は、そこで、ぶつかってしまうわけです。何回も挫折しました」
「どうして、十津川さんは、そう思われるんですか?」
 今度は逆に、三浦が聞いた。
「東京の場合、事件そのものは、はっきりとしています。それなのに、誘拐犯の顔は見えてこない。なぜなのか考えました。唯一の答えは、誘拐犯はブローカーでその誘拐を必要な人間に、売っているんじゃないか? 第一の事件と、第二の事件に関係している相手にです。誘拐ブローカーは、現場に出てこないから、いくら調べても、誘拐犯の顔は見えてこない。そんなふうに考えたんです」
 京都府警の三浦警部と話をしていると、十津川は、自分の考えに自信を持っていった。
 三浦警部は一泊して、京都に帰って行った。
 その翌日、私立探偵の橋本から、十津川に電話が入った。
「面白いニュースがあります」
 と、橋本が言った。
「私の知っている私立探偵がいるのですが、例の九州を走っている、長崎と佐世保の間を走る特急列車『或る列車』ですが、その列車の事件があった日、切符を、二枚何とかして手に入れてくれと頼まれて、一枚につき十万円で合計二十万円を、もらったというのです。間違いなくあの列車の切符で、そして、亀井刑事の息子の健一君が、誘拐された日の切符です」
「たしかに面白い。何とかしてその線で二十万円を出した人間を、見つけてくれ」
 十津川は頼んで、
「君と親しい私立探偵なのか?」
「いえ、それほど、親しくはありませんが、最近仕事が少なくて、、困っていたといいます。そこへ二十万円もくれるという嬉しい仕事なので、喜んで九州まで行き、並んで、切符を買ってきたと言っていました。本当に二十万円もらったのかと聞いたところ、間違いなく、二十万円現金でもらった。仕事が少ないので、有り難かった。そう言っています」
「名前は?」
「小林悟、三十歳。独身です。これから彼の事務所に行って、詳しい話を、聞いてきます」
 そう言って、橋本は、電話を切ったのだが、すぐに橋本は、慌てた感じで電話をしてきた。



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〈プロフィール〉
西村京太郎(にしむら・きょうたろう)
1930年東京生まれ。63年にオール讀物推理小説新人賞、65年に『天使の傷痕』で江戸川乱歩賞、81年『終着駅殺人事件』で日本推理作家協会賞、2004年には日本ミステリー文学大賞を受賞。鉄道ミステリーの第一人者。
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