連載
九州観光列車の旅
第六章「亀井救出の道」2 西村京太郎 Kyotaro Nishimura

「金田さんは、なぜ、このグループに興味を持ったんですか?」
 三田村が聞いた。
「私は昔から、バッジのコレクションをしています。去年あたりから、このバッジを見かけるようになったので、気にしていたのです。星と九を重ねたバッジというのは、珍しいですから」
「あなたは、九人のなかの誰かに会ったことがありますか?」
 と、橋本が聞いた。
「半年前、ある政治家の講演会に行ったことがありましてね。盛会でしたが、その中で、あのバッジをつけた男を見つけて、声をかけました」
「どんな話をしたんですか?」
「名前は聞けませんでしたが、古代大和への復帰を念じているといい、今日は、その政治家が好きなので、話を聞きに来たと言っていました。たしかに、その政治家は、政治信条の中に『古代日本への回帰』が入っているので、来ていたんだと思いますね」
 と、金田が言う。
「その政治家というのは、片山伸之、現総理じゃありませんか?」
「そうです。ただ、私が講演を聞きに行った時は、まだ総理じゃありませんでした。それに、片山代議士の支持団体としては、『山の会』がよく知られていましたので、このバッジの人は珍しかったですね」
 と、金田は言う。
「『山の会』というのは、正式に登録されている片山伸之の支援団体ですね?」
「そうです」
「『古代大和』というのは、登録されているんですかね?」
「いや、登録されていないし、私は、バッジの方から近づいたんですが、誰も知らないと思いますよ。何しろ、たった九人だけのグループですから」
 と、金田は言った。
 この「古代大和」の会に近づくのは、難しそうである。
 そこで、三田村と橋本は、登録されている「山の会」に先に当たってみることにした。
「山の会」は公称十万人、各都道府県に支部がある。
 二人は、東京支部の名簿を見せてもらうことにした。
 全体の三分の一近い名前が載っている。幹部十人については、写真がついていた。

(秋山実)
池田裕介
海原献一郎
工藤夏彦
佐野愛美
杉本ひろ子



      7  次へ
 
〈プロフィール〉
西村京太郎(にしむら・きょうたろう)
1930年東京生まれ。63年にオール讀物推理小説新人賞、65年に『天使の傷痕』で江戸川乱歩賞、81年『終着駅殺人事件』で日本推理作家協会賞、2004年には日本ミステリー文学大賞を受賞。鉄道ミステリーの第一人者。
Back number
第六章「亀井救出の道」2
第六章「亀井救出の道」
第五章「二つの力」2
第五章「二つの力」
第四章「別件逮捕」2
第四章「別件逮捕」
第三章 特急いさぶろうと特急はやとの風2
第三章 特急いさぶろうと特急はやとの風
第二章 男と女の動き2
第二章 男と女の動き
第一章 或る列車2
第一章 或る列車