連載
九州観光列車の旅
第六章「亀井救出の道」2 西村京太郎 Kyotaro Nishimura

 あの名前だった。青森県人会で、開幕前に、総理夫人と、会場の整備に当たった六人の名前である。いや、亀井刑事を殺人犯人と証言した六人である。
「山の会」の会員の中から、アトランダムに選んだ六人と思っていたのだが、東京支部の幹部たちだったのだ。
 それなら、亀井刑事によく似た男も、十人の中にいるはずだと、二人は思った。
 その推理は、当たっていた。

 木村良介
 河井幸男

 と続いて、九人目に、

 和田秀介

 の名前。そして、顔写真。
 二人は、揃って肯いた。
 亀井刑事に、そっくりな顔が、そこにあった。年齢四十五歳。偶然だろうが、亀井刑事と同年齢である。
 二人は素早く、この男の住所と携帯の番号をメモした。
 外に出たところで、三田村は、十津川に電話し、「山の会」の幹部の中に、亀井刑事にそっくりな「和田秀介」を見つけたと報告した。
「現在の住所と携帯の番号が書いてありましたが、すでに住所も携帯番号も変えていると思います」
「東京支部の理事長は、池田裕介だったかね?」
「そうです。六人の中の二人の女性も、東京支部の幹部だと分かりました」
「彼らは、現在、証人として品川署の監視下にあるので接触は難かしい」
「そうです。品川署の目を盗んで会うことはできません」
「理事長の池田裕介は、私たちと前に会っているな?」
「そうです。六人の証人の中には入っていますが、人材派遣会社を経営していますから、四六時中見張るのは無理なんだと思います」
「だが、亀井刑事を殺人犯にする計画に、重要な役割を果たしているはずだ」
「そう思います」
「すぐ戻ってこい。みんなで亀井刑事を助ける方法を考えるから」
 と、十津川が言った。

【つづく】



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〈プロフィール〉
西村京太郎(にしむら・きょうたろう)
1930年東京生まれ。63年にオール讀物推理小説新人賞、65年に『天使の傷痕』で江戸川乱歩賞、81年『終着駅殺人事件』で日本推理作家協会賞、2004年には日本ミステリー文学大賞を受賞。鉄道ミステリーの第一人者。
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