連載
明治維新直前に死んだ男たち
第二章 十津川村と明治維新 西村京太郎 Kyotaro Nishimura



 殺された梶本文也は、日記を残していた。その日記を読んでいるうちに、十津川は、今回の殺人事件と明治維新、そして、十津川村が関係していると思うようになった。
 亡くなった梶本文也自身も、その日記の中で十津川村に関心を持ち、その十津川村の郷士、中井庄五郎という二十一歳で亡くなった男に関心を持っていたことが分かった。
 今のところ不明だが、そのことと梶本文也の死とが関係あったとしても、決しておかしくはない。とにかく死んだ梶本文也は、十津川村と、十津川村の郷士で幕末に死んだ中井庄五郎という若者に大きな関心を持っていたことは、日記を見ればはっきり分かってくるのである。
 そこで、十津川は、亀井と問題の十津川村に行ってみることにした。
 行き先は奈良県の十津川村だが、その前に梶本の日記にあった京都に行き、中井庄五郎の墓に手を合わせることにした。
 新幹線を京都駅で降りると、京都府警のパトカーが迎えに来てくれていた。京都を案内してくれたのは、以前、合同捜査で知り合った京都府警捜査一課の菅原という若い警部である。
「最近は、明治維新一五〇年ということで、京都の町を歴史散歩する観光客が多くなりました。それに、西郷隆盛のドラマもありますから」
 菅原警部が、笑顔で、いった。
「電話で申し上げましたが、明治維新一五〇年のお祝いには、十津川村も、入っているんですか?」
 と、十津川が、聞いた。
「そうですね。坂本龍馬の墓のそばに、中井庄五郎の墓があって、この人は、いったい誰なんだということで、わざわざ中井庄五郎の墓参りをする人も生まれました。それが十津川村に通じるわけです」
 と、菅原が、いった。
 彼がまず案内してくれたのは、東山にある護国神社である。梶本の日記にあったように、護国神社には坂本龍馬や中岡慎太郎の墓があり、そして、そのそばには中井庄五郎の墓もあった。ただ、ひっそりと建っているのではなくて、中井庄五郎のファンも増えてきたので、護国神社では特別に、中井庄五郎のことを書いたパンフレットやグッズなども売っていた。
「なかなか人気があるんですね」
 十津川が、社務所で聞くと、
「観光客の年齢もあるんじゃないでしょうかね。以前の観光客は、坂本龍馬が京都で死んで、京都の護国神社にお墓がある。だから、拝んでいこうということでいらっしゃったのですが、最近は、歴史好きの人たちも増えて、その人たちがどこかで聞いたんでしょうね、中井庄五郎のことを知りたいといって来られるんです」
 と、社務所の人が、いった。



 
〈プロフィール〉
西村京太郎(にしむら・きょうたろう)
1930年東京生まれ。63年にオール讀物推理小説新人賞、65年に『天使の傷痕』で江戸川乱歩賞、81年『終着駅殺人事件』で日本推理作家協会賞、2004年には日本ミステリー文学大賞を受賞。鉄道ミステリーの第一人者。
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第六章 『奇は貴なり』の終章2
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