連載
沖縄はどう生きるか
②元海兵隊員も反対の座り込みに参加する辺野古埋め立てと高江のヘリパッド基地 佐野眞一 Shinichi Sano

 全身全霊をこめた比嘉の哀悼の辞に比べると、安倍に随行した沖縄及び北方対策担当大臣の鶴保庸介(つるほようすけ)のニヤケ顔は場違いなホストにしか見えなかった。
 鶴保は沖縄県北部の高江(たかえ)に建設中の米軍ヘリパッド基地に反対する人々に向かって、大阪府警に所属する機動隊員が「この土人が」と発言したことに対し、国会答弁で「『土人』という表現が差別かどうかは個人的に断定できない」と述べ、沖縄県民の怒りの炎に油を注ぐような発言をした男である。
 ちなみに鶴保の前の沖縄及び北方対策担当大臣の島尻安伊子(しまじりあいこ)(2016年の参院選で落選)は、この閣僚に選ばれたとき(第三次安倍内閣時の改造内閣)の資産調査で新任閣僚中のトップだった。
 私が沖縄でいつも世話になっている沖縄情報通のタクシー運転手さんによれば、これは島尻の夫が大変な資産家だからだという。
 ――島尻安伊子の旦那はどうやって資産家になったんですか?
「浦添市などの日本語学校でがっぽり儲けてきたからです。中国人観光客相手にいまでも濡れ手に粟の商売をしています」
 しかし、沖縄を食い物にしてきたという意味では女房の島尻安伊子も同じようなものだという。
「島尻安伊子は元々民主党公認の那覇市議でした。その時代は米軍ゲート前で“エイ、エイ、オー”という黄色いシュプレヒコールをあげていました。ところが、その後、手の平を返したように自民党に鞍替えした。まったく“何でもあり”の女にはかないません。沖縄県民の間では、彼女のことを『島尻安伊子』という人は一人もいません。みんな『島売(しまうり)安伊子』と呼んでいます(笑)」
 安倍内閣にとって、沖縄・北方対策担当大臣は鬼門になっている。
 2018年2月27日に初入閣し、沖縄・北方対策担当大臣となった福井照(ふくいてる)は、「週刊文春」と「週刊新潮」(いずれも2018年3月15日号)が報じた「ハレンチ」疑惑記事によって、超短命大臣で終わろうとしている。
 鶴保庸介にせよ島尻安伊子にせよ福井照にせよ、この程度の政治家が安倍の取り巻きだと考えると、安倍自身はもちろん、菅義偉を筆頭として安倍に群がる本土の政治家たちに比べれば、「過激派」と揶揄される沖縄県知事や、「スカッチ」を愛飲してやまない酔っ払い元沖縄県知事の方がずっと立派な政治家に見えてくる。

 今年1月、多摩川で入水自殺した評論家の西部邁(にしべすすむ)は、「【オキナワ】は恥の捨て所なのか」というエッセイを、鳩山由紀夫(はとやまゆきお)政権下の2010年に書いている。(『保守の辞典』幻戯書房所収)
 西部はこのエッセイで、沖縄根拠地隊の司令官だった大田実(おおたみのる)海軍中将が東京の参謀本部に打電した「沖縄県民かく戦へり 県民に対し、後世、特別の御高配を賜らんことを」という電文の内容を紹介しながら、「あの大東亜戦争で陸上総力決戦を行ったのはウチナンチュウだけである」と述べている。その末尾の言葉は、保守、革新を問わず読む者の心に強く響いてくる。
〈「オキナワ」には、国家の体をなさぬ戦後日本国家のウミが山積みとなっている。現在の体たらくは鳩山政権の愚かしさのみによってもたらされたのではない。一言でいえば、自主独立の努力どころか意欲をすら持たぬ国家は国際社会のなかで漂流し、ついに海の藻屑と消えるのが歴史鉄則だということであろう。そんな法則の歯車に子孫を噛み砕かせる者たちが「命の政治」とほざくのだから、何をかいわんやである。沖縄県民も「命の政治」に唱和してはならない。本土人にたいして「今度はお前たちがアメリカに抵抗する番だ」と公言すべきではないのか〉
 西部は死後、友人に自殺幇助(ほうじょ)してもらったことが明るみに出て後味の悪さを残した。しかし、ここに書かれた見解は保守派の最後の遺言として信用に値する。



 
〈プロフィール〉
佐野眞一(さの・しんいち)
ノンフィクション作家。1947年、東京生まれ。97年『旅する巨人 宮本常一と渋沢敬三』で第28回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。2009年『甘粕正彦 乱心の曠野』で第31回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書に、『巨怪伝』『東電OL殺人事件』『だれが「本」を殺すのか』『沖縄だれにも書かれたくなかった戦後史』『沖縄戦いまだ終わらず』など多数。
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④沖縄県人に活を入れる“琉球一の男”徳田球一、波瀾万丈の人生
③誰にも知られたくなかった沖縄の戦前の謎と戦後の闇
②元海兵隊員も反対の座り込みに参加する辺野古埋め立てと高江のヘリパッド基地
①うるま市女性暴行殺人事件傍聴記