連載
「沖縄はどう生きるか
②元海兵隊員も反対の座り込みに参加する辺野古埋め立てと高江のヘリパッド基地 佐野眞一 Shinichi Sano

高江のヘリパッド建設現場に現れた安倍昭恵
 トランプの大統領就任式をテレビで観た翌日、アメリカ軍のヘリパッド基地を建設中の国頭郡(くにがみぐん)東村(ひがしそん)の高江に行った。
 那覇から約1時間で辺野古のある名護に着き、そこからまた約1時間車を走らせなければ高江には着かない。
 私の率直な実感を言えば、高江の問題が本土のメディアでほとんど報道されないのは、現場があまりにも東京から離れているからである。
 高江は沖縄本島北部の東村にあり、周囲を取り囲む「やんばる」と呼ばれる豊かな森林地帯は、貴重な動植物たちの生息地となっている。
「DAYS JAPAN」の2016年9月号が、高江問題を特集している。その冒頭のグラビアページに、ドローンで上空から空中撮影された高江の森林伐採現場写真が載っている。
「やんばるの森」が無残にも伐採され、円形に刈り込まれたヘリパッド離着陸用の用地だけが丸裸の赤土となって残っている。
 この赤と緑の残酷なまでの対比風景を見た者は、誰でも息を呑み、そしてヘリパッド建設反対を叫ぶだろう。それほどショッキングな写真である。
 亜熱帯の密林は深い上に、旧林道の道は極端に細い。このため、反対派が座り込み用につくったテント村に行き着くまでは一苦労だった。
 よくもこんなに鬱蒼と木々が繁る山深い場所に、反対運動の拠点をつくったものだ。それが偽らざる実感だった。
 私が高江の森を訪ねてから約半月後の2017年2月4日、TBSの「報道特集」でトランプに関する興味深い番組が報道された。
 メインキャスターの金平茂紀が訪ねたのは、トランプの大票田のラストベルトといわれるアメリカ東海岸の中西部から北東部ではない。
 ラストベルトの「rust」とは「錆」を意味し、この地区はかつて鉄鋼業が非常に栄えたが、いまは廃工場だらけの寂れたエリアとなっている。
 金平が訪ねたのは、アメリカ中西部最北端ノースダコタ州のネィティブアメリカンの居留地である。ここはトランプによって石油パイプラインの敷設が予定されている。
 このキャンプ地に住む先住民は無抵抗にもかかわらず保安官によって狙撃されるなど、差別意識丸出しの扱いを受けている。
 金平は取材の最後にこのキャンプ地を統括する人物に会っている。彼はこの地区で誰からも尊敬される族長であり、歴史学者でもある。金平はこの人物から非常に感動的な話を引き出している。
「日本に帰ったらぜひ辺野古や高江で米軍基地建設反対運動を続けている沖縄の人々に伝えてください。私たちはあなたたちの運動を支持しています。私たちは必ず勝ちます。なぜならアメリカの自然と水を守ってきたのは、私たち先住民だからです。それは沖縄も同じです」
 辺野古の埋め立てや高江のヘリパッド基地建設に反対している人々の心の一番根っこの部分にあるのは、子や孫たちのために自然破壊は絶対に許さないという強い思いだろう。
 高江ヘリパッド基地反対派のリーダーである山城博治(やましろひろじ)は2016年10月17日にヘリパッド建設反対の抗議活動中に器物損壊の容疑で逮捕され、拘留中だったため、会えなかった。
 反対派の人々は口々に、「山城(沖縄平和運動センター)議長は建設を進める業者の鉄条網をペンチで切ったという理由だけで捕まったのですから、完全に不当逮捕です」と主張した。



 
〈プロフィール〉
佐野眞一(さの・しんいち)
ノンフィクション作家。1947年、東京生まれ。97年『旅する巨人 宮本常一と渋沢敬三』で第28回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。2009年『甘粕正彦 乱心の曠野』で第31回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書に、『巨怪伝』『東電OL殺人事件』『だれが「本」を殺すのか』『沖縄だれにも書かれたくなかった戦後史』『沖縄戦いまだ終わらず』など多数。
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②元海兵隊員も反対の座り込みに参加する辺野古埋め立てと高江のヘリパッド基地
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