連載
「沖縄はどう生きるか
②元海兵隊員も反対の座り込みに参加する辺野古埋め立てと高江のヘリパッド基地 佐野眞一 Shinichi Sano

 釈放後の各誌のインタビューで山城自身も、「逮捕されて留置された名護署から那覇市の検察庁や裁判所に移動するときも、腰縄を打たれた上、裸足にゴム草履で町中を歩かされた。完全な見せしめです」などと答えている。
 だが、反対運動にありがちなそんな決まり文句より、反対派の証言で興味を引かれたのは、安倍総理夫人の昭恵が、音楽家で政治活動もしている三宅洋平という男に連れられて高江に突然現れたという話だった。
 この時点ではまだ安倍昭恵がからむ森友問題は発覚していなかったが、何にでも首を突っ込みたがるおっちょこちょいな女だな、と感じたことを覚えている。
 山城が拘留中の那覇拘置支所から保釈されたのは、逮捕から約5か月後の2017年3月18日の午後8時過ぎだった。拘留期間は152日にも及んだ。
 高江の現場で有刺鉄線をペンチで切った、辺野古の現場でコンクリートブロックを積んだ。これだけで150日を超える長期拘留にするのは、どう考えても「見せしめ」である。保釈請求も二度にわたって棄却された。
「国家」に逆らうと、こういう目にあうぞ。山城はそれを沖縄県民に知らしめるための不幸な犠牲者になったとしか思えない。
 私が山城に会ったのは、山城が保釈された直後の昨年3月21日のことだった。この日は皮肉なことに、新しい共謀罪が閣議決定された日だった。
 その前日、私は山城の弁護人として接見を続けた社民党参議院議員の照屋寛徳(てるやかんとく)に宜野湾市の事務所で会った。山城の取材を取り次いでもらうためだった。
 照屋と会うのは久しぶりだった。少し老け込んだような気がした。しかし、その加齢が長い眉毛を真っ白にさせ、照屋の顔に能面の翁(おきな)のような風格を与えていた。
 照屋は十数年前に脳梗塞を患い、それ以来ゆっくりとした話し方しかできなくなった。だが、その悠揚迫らざる話し方も、照屋の何ともいえない味となっている。
 まず誕生したばかりのトランプ政権について聞いてみた。
 ――「アメリカファースト」のトランプは、「世界の警察官になるのはもうやめた」という思いがあるのではないか、それは沖縄の米軍基地を縮小する動きにもつながるのではないか。そういう声が一部にあります。この意見についてはどう思われますか。
 翁面の照屋は白い眉毛をそよがせながら、ゆっくりとした口調で言った。
「そういう期待をする声が県民の間にあったことは間違いありません。けれど、いまの安倍政権はアメリカ従属どころか、アメリカ隷属だから、辺野古新基地建設一辺倒の方針で暴走するんじゃないかと、私は心配しています」
 ――ところで、照屋さんにとって、アメリカの歴代大統領で一番評価できるのは誰ですか?
「私の感想では、いいアメリカ大統領は正直一人もいませんね。沖縄県民は沖縄戦が終わって27年間もアメリカの軍事支配下で生きてきたんです。日本国憲法も適用されない世界です。では復帰後の沖縄がどうかといえば、いまも憲法の理念に反するような日米の軍事植民地扱いだ」
 無憲法状態から反憲法状態へ。この照屋の指摘は、ずっしりと心に響いた。



 
〈プロフィール〉
佐野眞一(さの・しんいち)
ノンフィクション作家。1947年、東京生まれ。97年『旅する巨人 宮本常一と渋沢敬三』で第28回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。2009年『甘粕正彦 乱心の曠野』で第31回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書に、『巨怪伝』『東電OL殺人事件』『だれが「本」を殺すのか』『沖縄だれにも書かれたくなかった戦後史』『沖縄戦いまだ終わらず』など多数。
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