連載
「沖縄はどう生きるか
②元海兵隊員も反対の座り込みに参加する辺野古埋め立てと高江のヘリパッド基地 佐野眞一 Shinichi Sano

空海に似ている? 反対派のリーダー
 その翌日、指定された沖縄市(旧コザ市)のアメリカンスタイルのカフェ「A&W」で気の抜けたビールよりはるかに不味(まず)いルートビアを飲みながら待っていると、釈放されたばかりの山城博治が照屋寛徳に付き添われて現れた。
 照屋は相変わらずのゆっくりとした口調で、「新しい共謀罪が閣議決定された日に佐野さんと山城くんが会うなんて、まさに歴史的な日じゃないか(笑)」と言った。
 照屋が「共謀罪云々」と言ったわけは、山城の保釈の条件として、「関係者」に会うことは厳禁と裁判所から釘を刺されていることをわざと皮肉ったからである。
 こういう絶妙なユーモア感覚が、照屋の独特な持ち味である。照屋が激戦区の沖縄で連続当選を続けている理由も、そこにある。
 照屋は山城の出身校の県立前原高校(うるま市)の7年先輩である。2010年の参院選では照屋に推されて社民党推薦候補として沖縄選挙区から立候補した。だが、残念ながら前出の島尻安伊子、いや島売安伊子に敗れて落選した。
 山城は高江に座り込み中の2015年、悪性リンパ腫の治療で4か月あまり入院せざるを得なかった。
「私が入院しているときも、拘置所にいるときも(照屋)寛徳さんはお見舞いに来てくれました。寛徳さんは私の兄貴代わり、父親代わりなんです。照屋先生が来るとホッとしちゃって、気持ちがうんと楽になるんです」
 山城のインタビュー記事は「週刊金曜日」や岩波の「世界」、さらには「部落解放」まで数多く出ている。雑誌の性格上、イデオロギー過多の内容になっていて、はっきり言ってつまらない。
 私は保釈から最初のインタビューで、人間・山城博治という点に、あえて言えばその点に絞ってだけ質問した。
 もし拘置中の苦労話や、司法に対する怒りが知りたければ、前掲の「週刊金曜日」以下の雑誌に全部載っているので、そちらをお読みいただきたい。
 ――山城さんが獄中にいる間に、アメリカ大統領選が行われてトランプが当選しましたね。結果を聞いてどう思われましたか。
「そのニュースは名護署に拘留されているときに聞きました。投票日は確か2016年の12月だったんじゃないですか」
 ――正確に言うと11月です。そのときの率直な感想をお聞きしたいのですが。
「ヒラリーは怖いので、彼女が負けたことはよかったと思います」
 ――ヒラリーは怖い、はぁ〜。
「トランプも言っていることは支離滅裂ではあるんですが……」
 ――まあ、それはそうです(笑)。
「でも、どこか風穴を開けてくれるような気はしましたね。それに比べてヒラリーはジャパンハンドラーといわれている連中を束ねていますし」
 ジャパンハンドラーとは、日本を陰で操るアメリカの政治家や官僚、実業家たちのことである。
「でも、トランプが大統領になっても沖縄の状況はまったく変わりませんよ」
 トランプは「アメリカファースト」を標榜する性格からいって、沖縄問題など何の関心も持っていないだろう。トランプは大統領就任から間もなく、ホワイトハウスでドイツのメルケル首相とトップ会談をした。メルケルが握手を求めると、トランプはプイと横を向いて握手を拒否した。
 この悪ガキ丸出しのふるまいを見たとき、これは世界の舵取りをするのは到底無理な男だと思った。



 
〈プロフィール〉
佐野眞一(さの・しんいち)
ノンフィクション作家。1947年、東京生まれ。97年『旅する巨人 宮本常一と渋沢敬三』で第28回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。2009年『甘粕正彦 乱心の曠野』で第31回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書に、『巨怪伝』『東電OL殺人事件』『だれが「本」を殺すのか』『沖縄だれにも書かれたくなかった戦後史』『沖縄戦いまだ終わらず』など多数。
Back number
④沖縄県人に活を入れる“琉球一の男”徳田球一、波瀾万丈の人生
③誰にも知られたくなかった沖縄の戦前の謎と戦後の闇
②元海兵隊員も反対の座り込みに参加する辺野古埋め立てと高江のヘリパッド基地
①うるま市女性暴行殺人事件傍聴記