連載
「沖縄はどう生きるか
②元海兵隊員も反対の座り込みに参加する辺野古埋め立てと高江のヘリパッド基地 佐野眞一 Shinichi Sano

「私の父親はいま90歳ですけど、日本軍がどんなに恐ろしいか、逆に米兵はどんなにありがたかったか、という話をいまでもします。だから、中学時代、お前は何でアメリカに反対するのかって、怒られ通しでした」
 ――中学時代から反米だったんですか?
「B52(米軍の超高速大型爆撃機)が嘉手納に来て、いつも抗議しに行っとったんですよ。すると親父は『お前はアカか』って怒るんです」
 山城は最初、「関係者に会うことはまかりならん」という裁判所の姿勢に警戒心を持っていたらしくひどく口が重かった。
 裁判所が山城と関係者を会わせたくなかったのは、会わせると口裏を合わせて証拠隠滅の怖れがあると考えているためらしかった。ペンチで有刺鉄線を切ったというだけの罪で、どんな証拠隠滅があるというのだろうか。もし当局が本気でそう考えていたら、まさに失笑ものである。
 お上の考えることにはいつも疑心暗鬼の気持ちが渦巻いている。だが山城もプライベートな話をするうち次第に口もほどけて、こんなことまで言い出すようになった。
「悪いけど、佐野さんという人はある意味、とんでもない札付きの反戦作家なんだから、そんな人間とは会うことはまかりならんと言われかねないと思っていた(笑)」
 これを聞いた付き添い役の照屋寛徳が、相変わらずのゆっくりした口調でこう言った。
「佐野さんは関係者というより、共犯者になるかもしらんけど、ハハハハ」
 ――ところで悪性リンパ腫は相当お悪いんですか?
「私はもうレベル4で医者から末期だと聞いています。いまでも月一回の診療を受けています」
 ――照屋寛徳さんが拘置所に面会に来たり、病院のお見舞いに来たそうですが、そういうときはどんな話をされたんですか。
「照屋先生はいつも『堅いことは考えるな、辺野古の話はやめれ』って言うんです」
 すると、照屋寛徳が横から口をはさんできた。
「空海の話もよくしたな」
 ――えッ、空海?
「あの大宗教家の空海じゃないですよ。私は悪性リンパ腫に冒されたんで、抗癌剤を使って進行を遅らせていたんです。すると、頭は禿げるし、眉毛も鼻毛も生えなくなってくる。そんな状態で退院したとき、ちょうど運転免許証の書き換えの時期だったんです。そのとき撮った写真が、空海そっくりだって。照屋先生がそう言って笑うんです(笑)」
 この話を聞いて、山城が難病と闘いながら152日もの長期拘留に耐えられた理由がわかったと思った。
 山城は尊敬する照屋寛徳の薫陶よろしきを得て、すべてを「笑い倒す」つもりで今日まで生き抜いてきたに違いない。
 山城は「逮捕は違憲」として、那覇地裁で係争中だったが、昨年12月20日審理は終わった。判決は今年3月14日に出た。
 威力業務妨害罪などに問われた山城は無罪を主張していたが、那覇地裁は懲役2年、執行猶予3年(求刑懲役2年6月)という厳しい判決を言い渡した。



 
〈プロフィール〉
佐野眞一(さの・しんいち)
ノンフィクション作家。1947年、東京生まれ。97年『旅する巨人 宮本常一と渋沢敬三』で第28回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。2009年『甘粕正彦 乱心の曠野』で第31回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書に、『巨怪伝』『東電OL殺人事件』『だれが「本」を殺すのか』『沖縄だれにも書かれたくなかった戦後史』『沖縄戦いまだ終わらず』など多数。
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④沖縄県人に活を入れる“琉球一の男”徳田球一、波瀾万丈の人生
③誰にも知られたくなかった沖縄の戦前の謎と戦後の闇
②元海兵隊員も反対の座り込みに参加する辺野古埋め立てと高江のヘリパッド基地
①うるま市女性暴行殺人事件傍聴記