連載
「沖縄はどう生きるか
②元海兵隊員も反対の座り込みに参加する辺野古埋め立てと高江のヘリパッド基地 佐野眞一 Shinichi Sano

アメリカ海兵隊の本音を引き出した「テロリストは僕だった」
 辺野古、高江問題で最後に取り上げたいのは、反対運動に対して執拗なヘイトスピーチを続けるメディアの問題である。
 沖縄で手に入れた「ゆんたくシーサー」という小冊子がある。“ゆんたく”とは沖縄方言で「おしゃべり」のこと、「シーサー」は魔除けのための伝説の獣像で、沖縄では屋根や塀の上に置かれることが多い。
 この小冊子の中身は「中国の侵略から沖縄を守れ」という主張(というか言いがかり)一辺倒である。5ページのマンガもあり、「(名護市では)選挙前になると、市外から転入者がやって来て住民の数が増えるんだ そして選挙が終わったら減っちゃう」「……そんな! そうやって基地の移転反対の者を増やそうとしているんですか?」という、公職選挙法違反ぎりぎりのやり取りが描かれている。
 問題なのは、この小冊子を発行しているのが幸福実現党という右寄りながられっきとした政党だということである。この小冊子発行の裏に、政府の思惑があることを感じざるを得ない。
 一方、高江の反対運動に対しては、TOKYO MXテレビの「ニュース女子」という番組が「反対派は弁当付きで、2万円の日当をもらっている」という根拠のない、ある意味で非常に古典的なフェイク情報を流した。
 また保守系の情報を流す「日本文化チャンネル桜」沖縄支局キャスターの我那覇真子は、「琉球新報、沖縄タイムスを正す県民・国民の会」なるものを立ち上げた。
 我那覇は2015年に出版した『沖縄から日本の未来が見える 祖国・日本のために私がしたいこと』という大仰なタイトルの本で、こんなことを述べている。
〈沖縄の新聞とはいったい何なのでしょうか。左翼革命勢力の前衛と言っても過言ではないでしょう。あるいは、新聞の形をした革命機関紙または、新聞を偽装する政治工作紙と言い換えてもよいでしょう〉
 私はこの箇所を読んだとき、百田尚樹なるベストセラー作家が「沖縄の新聞は絶対つぶさなあかん」と関西弁で吠え立てているという話を思い出した。
 沖縄の新聞がすべて正しいとは言わない。山城博治が釈放されたときの琉球新報、沖縄タイムスの一面トップの記事など、号外が出たのかと間違えたほどだった。こういう英雄扱いは山城にとっても迷惑だろうし、著しい違和感を覚えた。
 しかし、照屋が言うところの憲法も通用しない軍事植民地化された沖縄においては、新聞が多少「過激」にならない限り、「真実」が伝わりにくいこともまた事実である。
 いまあげたような暴言を吐く連中には何を言っても無駄だと思う。なぜなら、自分の意見が通らないのは世界が間違っているからだという「信念」に凝り固まり、そこから一歩も外に出ようとしないからである。
 現職沖縄県知事の「過激派」ぶりや、それに反発する連中のヘイトスピーチについては本土の人間もたぶん知っているだろう。
 しかし、これから紹介する番組については大多数の日本人が知らなかったはずである。
「テロリストは僕だった〜沖縄・基地建設反対に立ち上がった元米兵たち〜」というテレビ朝日系の琉球朝日放送で2016年12月5日に放送されて評判を呼んだ番組である。
 あまりに評判がよかったため、キー局のテレビ朝日でも再放送された。
 ただし、2017年12月30日の午前4時55分からというひどい時間帯での再放送だったため、観た人はほとんどいなかったはずである。そのため、あえて本稿でその内容をあらためて紹介したい。



 
〈プロフィール〉
佐野眞一(さの・しんいち)
ノンフィクション作家。1947年、東京生まれ。97年『旅する巨人 宮本常一と渋沢敬三』で第28回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。2009年『甘粕正彦 乱心の曠野』で第31回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書に、『巨怪伝』『東電OL殺人事件』『だれが「本」を殺すのか』『沖縄だれにも書かれたくなかった戦後史』『沖縄戦いまだ終わらず』など多数。
Back number
④沖縄県人に活を入れる“琉球一の男”徳田球一、波瀾万丈の人生
③誰にも知られたくなかった沖縄の戦前の謎と戦後の闇
②元海兵隊員も反対の座り込みに参加する辺野古埋め立てと高江のヘリパッド基地
①うるま市女性暴行殺人事件傍聴記