連載
「沖縄はどう生きるか
②元海兵隊員も反対の座り込みに参加する辺野古埋め立てと高江のヘリパッド基地 佐野眞一 Shinichi Sano

 取りあげられているのは、マイク・ヘインズという40歳の元海兵隊員である。イラク戦争に参加した彼は、テロリストとの戦いを口実にした戦闘の最前線で戦ったが、イラクにとって、僕らこそテロリストだったということに気づく。
 ヘインズはそのときのことを振り返ってこう告白する。
「上官からテロリストの家だと言われて突入したけど、普通の家ばかりだった。その家に入って、見つけたおばあさんを掴んで壁に叩きつけた。少年が恐怖のあまり小便を漏らしながら泣きじゃくっていた。その光景は今でも忘れられない」
 このあと、海兵隊の訓練風景がインサートされる。彼らは「ワンショット・ワンキル」という言葉を殺人を命じられたロボットのように叫びながら、行進を続ける。
 この恐ろしいシーンから場面は現在に変わり、元海兵隊員でつくられた「ベテランズ・フォー・ピース」(平和を求める元軍人の会)の集会の様子が映される。
 ヘインズもこの集会に参加している。彼は18歳のとき、沖縄にも駐留している。集会の入り口に貼られた、「アメリカが起こした戦争のPTSDで毎日22人の退役軍人が自殺」という張り紙のカットが本筋のテーマとは関係ないが、効果的である。
 この番組の白眉は、「ベテランズ・フォー・ピース」のメンバーが、辺野古と高江の新基地建設に反対して、日本人とスクラムを組み、現場で座り込みをしている場面である。
 彼らは「辺野古の海を守ろう」とか「やんばるの森を守ろう」などと書かれた黄色いTシャツを着て、機動隊員と激しく対峙する。
 その中の一人は「日本の警察はまだ優しいね。アメリカだったら、もっと殴り飛ばされていたよ」「辺野古や高江に反対する人びとは海兵隊より勇敢だ」などと言って笑う。
 彼らが辺野古と高江の基地建設に反対する声明文を日米両政府に提出したことも紹介される。「海兵隊が沖縄に駐留する意味はない」というのが、彼らの言い分である。
 高江の現場で展開される最後のシーンは、感動的である。
 60過ぎの年配の沖縄女性が高江の反対運動に加わり、「ベテランズ・フォー・ピース」のメンバーたちと日米の垣根を越えて会話をかわす。
 彼女はNHKの「クローズアップ現代」(2016年6月15日放送)でも紹介された金城葉子という女性である。
 彼女はこの番組でもNHKの番組と同様に、実名を明かして米兵にレイプされかかった忌まわしい過去を語っている。
「そのときのことは誰にもずっと話せませんでした。私がここに来たのはアメリカ人でも基地に反対する人がいるとわかったからです」
 米兵たちはイラク戦の戦争体験を通じて、自分たちこそテロリストだと気づき、この女性はアメリカ兵がからむ過去の忌まわしい出来事を勇気をもって告白する。
 両者に共通しているのは、戦争と基地は人生に何の果実ももたらさない、それどころか、人間を救いのない悲劇に突き落とす、という深い思いである。
 だからこそ、それまで見ず知らずの関係だった彼らは、新基地建設反対の現場で出会った。私がこの番組に感動したのは、まさにその一点だった。
 どうだろう。ここまで言ってもまだ、ヘイトスピーチを続ける連中は、新基地建設に反対するのは「中国の回し者」であり、2万円の日当をもらっているといった明らかなデマを垂れ流すのだろうか。
 そして、「沖縄の新聞は絶対つぶさなあかん」とかいう、私からいわせれば、とんでもない言いがかりをわめき続けるつもりなのだろうか。



 
〈プロフィール〉
佐野眞一(さの・しんいち)
ノンフィクション作家。1947年、東京生まれ。97年『旅する巨人 宮本常一と渋沢敬三』で第28回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。2009年『甘粕正彦 乱心の曠野』で第31回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書に、『巨怪伝』『東電OL殺人事件』『だれが「本」を殺すのか』『沖縄だれにも書かれたくなかった戦後史』『沖縄戦いまだ終わらず』など多数。
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④沖縄県人に活を入れる“琉球一の男”徳田球一、波瀾万丈の人生
③誰にも知られたくなかった沖縄の戦前の謎と戦後の闇
②元海兵隊員も反対の座り込みに参加する辺野古埋め立てと高江のヘリパッド基地
①うるま市女性暴行殺人事件傍聴記