よみもの・連載

佐藤満春トイレの輪〜トイレの話、聞かせてください〜

第2回 ノンフィクション作家・高野秀行氏

佐藤満春Mitsuharu Sato

高野
今でもね、トイレというのは、ほんとうに信用ならないものだって思ってる。高級ホテルとかは別ですよ。でも滅多に泊まらないし。もし辺境地へ行ってゲストハウスとかそういうところで、部屋にトイレ付きとトイレ共同ってあるとしたら、僕は迷うことなく共同を選びます。
佐藤
ええ? 何でですか。
高野
部屋にトイレが付いてると、それは僕しか使わないでしょ。だから、壊れたって言っても直してくれないんですよ。でも共同のトイレはみんなが使うから、みんなが文句言うので、比較的早く直るんです。
佐藤
基本的に壊れることを想定しているというか、故障することが前提で。
高野
そう。だからトイレは共同がいいんです。
佐藤
なるほど。そういった土地にいろいろ行かれて、日本に帰っていらっしゃったとき、日本のトイレってやっぱり素敵だなって思いますか?
高野
ちょっと大げさな気がしますよね。
佐藤
ここまでちゃんとしなくてもっていう感じですか。
高野
そうそう。でも、その感覚っていうのは最初のうちだけです。だんだんそれが心地よくなってくるんですよね。日本の環境に慣れてると、清潔であるほうがいいっていう方向にあっという間に流されていくんでね。
佐藤
そうですよね。今、日本の各トイレメーカーが、どんどんトイレの節水化を進めていて、どんどん海外にその商品を売り出していこうとしてはいるものの、世界的にトイレ環境がなかなか整ってない国が多いという状況なんです。高野さん的に今後、世界のトイレ環境をよくしていこうという動きについて、どうしていったらいいと思われますか?   いいトイレを日本がつくってどんどん世界に輸出するというのは一つの手段だとは思うんです。しかし、上下水道が整備されていないとか、もっと根本的な問題があったりとかして、すごく非衛生的で、病気がどんどん増えていってしまうというような現状があると思っているんですが。
高野
何でトイレの問題って発展しないんだろうか、進歩が遅いんだろうかって不思議ですよね。日本の企業なんかも、今ある日本のものを輸出してもしようがないので、現地に合ったものを輸出すればいいということですよ。さっきも言いましたけど、水が少ないところだとか、そもそも仕組みが違うじゃないですか。
佐藤
はい、そうですね。
プロフィール

佐藤満春(さとう・みつはる) 1978年生まれ。テレビ番組等の構成作家、お笑いコンビ「どきどきキャンプ」として活動中。トイレ博士としてイベントに出演したり、トイレを研究するラジオ番組のパーソナリティーなども務める。日本トイレ協会会員。掃除能力検定士(5級)。名誉トイレ診断士。トイレクリーンマイスター。

高野秀行(たかの・ひでゆき) 1966年、東京都八王子市生まれ。ノンフィクション作家。
早稲田大学探検部在籍時に書いた『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)をきっかけに文筆活動を開始。
「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書く」がモットー。アジア、アフリカなどの辺境地をテーマとしたノンフィクションのほか、東京を舞台にしたエッセイや小説も多数発表している。

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