よみもの・連載

佐藤満春トイレの輪〜トイレの話、聞かせてください〜

第2回 ノンフィクション作家・高野秀行氏

佐藤満春Mitsuharu Sato

佐藤
すごいですね。そういうとこで育てばそういう価値観になるということだ。
高野
それ都会ですからね、しかもね。
佐藤
そうなんですか。
高野
田舎に行くともっともっとすごくなって、公衆便所なんてあまりにも汚くて、入るのが危険なんですよ。まずは入るでしょ、入っても穴があいてるだけなんですね。
佐藤
する場所ですよ、ということだけで。
高野
そう。で、しかもそこら中にうんこがしてあって、うんこ、小便の海で、そこでもし足を滑らしたりしたら。
佐藤
アウトですね。
高野
しかも真っ暗でね、大体、レンガ造りで、暗くて。暗いから行けるというのもあるんだけど。
佐藤
そっか、見えちゃうと惨状がわかっちゃうから……。
高野
最初のうちは慎重に入って、中まで行って、穴にやってたんですよ。でも、しばらくたってから、これ何で俺だけ穴まで行かなきゃいけないんだろうと思ってね、行く必要ないじゃん、みんなここでやってんだからと思って、入口の近くでするようになって、で、はたと、トイレに入る必要もないんじゃないかという真理に気づいた。
佐藤
そもそもだ(笑)。
高野
実際ね、公衆便所の周りってうんこだらけで、しかもうんこが尾を引くように流れ出てて、道歩いててもすぐわかるんです。
佐藤
すごいですね。どんどんその幅が広がっていっちゃうんですもんね。それって、数十年たつうちに、一回ちょっとここだめだ、掃除しようというときが来るんですかね。
高野
そういうときが来る前に、いきなり近代化の波が押し寄せて、日本のトイレとそっくりなトイレになってるんですよ、今は。
佐藤
今、中国はすごいって聞きますよね。
高野
同じ国の同じ場所なのかと思うくらいですよ。だってそれまでは、長距離バスのターミナルの公衆便所なんていったら阿鼻叫喚(あびきょうかん)って相場は決まってたわけです。
佐藤
もう諦めて。
高野
そう。穴があいてて、ほかにも人がいて、座ると前のおっさんか兄ちゃんかの尻からにゅるにゅると出てくるのが見えて、それを見ながらやるとかね、そういうものだったのが、今は日本の高速道路のサービスエリアのトイレとそっくり。
佐藤
すごいですね、そう考えたら。
プロフィール

佐藤満春(さとう・みつはる) 1978年生まれ。テレビ番組等の構成作家、お笑いコンビ「どきどきキャンプ」として活動中。トイレ博士としてイベントに出演したり、トイレを研究するラジオ番組のパーソナリティーなども務める。日本トイレ協会会員。掃除能力検定士(5級)。名誉トイレ診断士。トイレクリーンマイスター。

高野秀行(たかの・ひでゆき) 1966年、東京都八王子市生まれ。ノンフィクション作家。
早稲田大学探検部在籍時に書いた『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)をきっかけに文筆活動を開始。
「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書く」がモットー。アジア、アフリカなどの辺境地をテーマとしたノンフィクションのほか、東京を舞台にしたエッセイや小説も多数発表している。

Back number