よみもの・連載

佐藤満春トイレの輪〜トイレの話、聞かせてください〜

第2回 ノンフィクション作家・高野秀行氏

佐藤満春Mitsuharu Sato

高野
久しぶりにビールを飲んだりすると、苦いとかまずいとか思ったりするんです。そのうち、幾らも飲まないあいだに眠くなって寝ちゃうというね、中学生みたいな感じになる。
佐藤
リセットされるんですかね。
高野
そう、何かがね。それも我慢して三日ぐらい続けてると普通に飲めて。
佐藤
またアルコールの回路になっていくという。
高野
そうそうそう。
佐藤
今、便秘のお話を聞きましたけど、高野さんは、お腹を下すこととかも結構多かったりしますよね。
高野
多いですよ。僕は特にお腹が強くないんで、よく下痢したりしてるんですよね。ほんと嫌です。
佐藤
そうですよね。その分、トイレに行く回数、増えますし。
高野
ひどい目に遭ったことがもう数え切れないぐらいあるんですけど、最近だとね、エチオピアに行ったんですよ、ソマリランドに行く途中で。
佐藤
はい。
高野
で、エチオピアに一泊だけして。まあ一泊だから割と便利なところのホテルに泊まったんですよ。十階建てとかの。チェックインしてから食事に行って、普通にエチオピアの料理を食べたんですけど、なぜかその後に猛烈な吐き気と下痢に襲われて、慌ててホテルに帰って、自分の部屋入って、トイレに行こうとしたら扉が開かない。誰もいないのに、中から鍵がかかってて。
佐藤
うわあ。
高野
で、今にも吐きそうな中フロントに電話したら、「ちょっと待ってて、今から行く」とかって言ってんだけど全然来ない。仕方ないから降りていって、トイレどこだって聞くんだけども、夜勤の人ってあんまりわかってない人が多いわけですよね。
佐藤
なるほど。あんまり把握してない。
高野
トイレが開かないんだって言ったら、じゃあ見に行くとか言う。見に行くんじゃなくてトイレ貸してくれって言っても、言葉もよく通じないし、エレベーター乗って上がっていこうとするから一緒に行くしかなくて、僕の部屋入っていって、「あれ、このトイレ開かない」って言うの(笑)。そこまでは知ってるんだって!っていうね(笑)。とにかくほかのトイレを貸してくれと、俺はげろもうんこも出そうなんだとか、ぎゃあぎゃあ騒いでたら、隣の部屋の鍵を貸してくれたんですね。で、今度は普通に扉が開いて、それに感動して、上から下からばあっと出して、ほんと幸せって思った(笑)。
佐藤
感動して、ばあって吐くってすごいですね。食べものももちろんそうですけど、トイレ環境もリスク高いですね。でもそういうことがあっても、またいろんな場所に行かれるじゃないですか。何でですか?
高野
忘れちゃうんですね、単純に(笑)。
佐藤
高野さん、お話聞いてると、確かによく忘れちゃってますよね。
高野
忘れるというのは重要な能力で、これね、喉元過ぎても覚えてるような人は行けないですよ、何回も。
佐藤
なるほど。確かに。
高野
僕はすぐ忘れちゃうんで、とにかく。あんなにつらかった、というのはなんか全部忘れちゃって、妙にね、楽しかったこととかおもしろかったことばっかりね、覚えてんですよ。
佐藤
それ、一番いいですね。
高野
もう一回行きたいと思って行くと、ああ、そうだった、って。
佐藤
思い出すと(笑)。
プロフィール

佐藤満春(さとう・みつはる) 1978年生まれ。テレビ番組等の構成作家、お笑いコンビ「どきどきキャンプ」として活動中。トイレ博士としてイベントに出演したり、トイレを研究するラジオ番組のパーソナリティーなども務める。日本トイレ協会会員。掃除能力検定士(5級)。名誉トイレ診断士。トイレクリーンマイスター。

高野秀行(たかの・ひでゆき) 1966年、東京都八王子市生まれ。ノンフィクション作家。
早稲田大学探検部在籍時に書いた『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)をきっかけに文筆活動を開始。
「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書く」がモットー。アジア、アフリカなどの辺境地をテーマとしたノンフィクションのほか、東京を舞台にしたエッセイや小説も多数発表している。

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