よみもの・連載

佐藤満春トイレの輪〜トイレの話、聞かせてください〜

第3回 小説家・朝井リョウ氏

佐藤満春Mitsuharu Sato

もしもおなかが治るなら……?

佐藤
催眠療法の話がありましたけれども、たとえば手術とか薬とかで治るとなったら、治しますか。
朝井
治したいです。が! 思ったより複雑な問題ですね。もはや、アイデンティティーにもなっているので。
佐藤
お話をうかがっていると、そういう感じがしますよね。
朝井
想像ができないんですよ、行動が制限されていない自分の人生を。
佐藤
確かに、人間が変わっちゃいそうな感じすらしますね。普段は一人でいることが多いですか?
朝井
そうなりますね。
佐藤
やっぱり。誰かといると、気を遣いますよね。年齢を重ねていって、状態がよくなった、悪くなったみたいなことはないんですか。
朝井
よくなってはいないですね。こういう症状は男性が多い印象があるんですが、四十代、五十代の方に会って話を聞くと、どこかでなくなったという五十代の方に会う機会が複数回ありました。
佐藤
へえ、そういう人もいるんですね。
朝井
「僕もおなかが弱かったんだけど、どこかで、あ、今日は気にしていないな、という日があって、大丈夫になった」みたいな話をうかがいました。その年代になったときはさすがに解放されていたいです。おなかが弱いというアイデンティティーなど、いらない。
佐藤
さすがに五十とかになったら、優先順位として、もうちょっと下でもいいのかなという感じはありますか。
朝井
いつもおなかのことを一番に考えている五十代にはなりたくないです……。
プロフィール

佐藤満春(さとう・みつはる) 1978年生まれ。テレビ番組等の構成作家、お笑いコンビ「どきどきキャンプ」として活動中。トイレ博士としてイベントに出演したり、トイレを研究するラジオ番組のパーソナリティーなども務める。日本トイレ協会会員。掃除能力検定士(5級)。名誉トイレ診断士。トイレクリーンマイスター。

朝井リョウ(あさい・りょう) 1989年、岐阜県生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業。2009年『桐島、部活やめるってよ』で第22回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。13年『何者』で第148回直木賞受賞。14年『世界地図の下書き』で第29回坪田譲治文学賞受賞。 最新刊は『どうしても生きてる』(幻冬舎)。

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