よみもの・連載

佐藤満春トイレの輪〜トイレの話、聞かせてください〜

第3回 小説家・朝井リョウ氏

佐藤満春Mitsuharu Sato

トイレに行くのは「恥ずかしい」?

朝井
今、排泄予知デバイスも開発が進んでいますよね。
佐藤
はい。介護の場で。
朝井
開発チームの方が書いた本を読んで、とても感謝しました。すばらしいと思います。
佐藤
介護とトイレと排泄、そこに軸足を置いた技術開発も進んでいくと思います。それこそ、介護される側が認知症などの様々な事情で自分で排泄したいと言えないような場合、予知デバイスを活用したりとか。まだ精度はあまり高くないみたいですけれども、うまく転がっていけばいいですね。
朝井
最近、排泄機能に生まれつき障害があるというケースを知ったのですが、その場合、数時間ごとに自分でカテーテルを使って排泄をしなければいけないんですね。学校とか、修学旅行とか、そういうときにも決まった時間に必ずトイレに行かなきゃいけない。学生時代って、トイレによく行く子というだけで笑われたりするじゃないですか。とにかくトイレのイメージが悪い。
佐藤
そうなんです。学校でトイレに行くことが、こんなに嫌なんだというのを変えたいんですよね。
朝井
ほんとうですよ!
佐藤
別に、呼吸するのと一緒というか……誰がいつ行こうが当たり前、という状況になるといいんですけれどもね。
朝井
排泄は全員していることなのに、何で隠さなければいけないんだということを感じます。
佐藤
変えられるとは思うんですよね。我々の行動次第で。
朝井
そう思います。前回の対談で高野さんが話されていた中国の話は衝撃的でした。人がしているところが見えるというのはきついなと思いましたけれども、排泄に対するハードルの低さというのは、ある種、こうあればいいのにという理想でもありました。
佐藤
もうちょっと身近で等身大というか、格好つけていない感じはいいですよね。朝井さんがそんな思いでいるとは新鮮でした。最近、東京オリンピックに向けて、海外の人もたくさん来ることを踏まえて、トイレ環境をよくしていこうという感じにはなってきているんですよね。
朝井
なるほど、そういう理由もあるんですね。
佐藤
あとは、商業施設がトイレをきれいにしたら女性客が増えてお金を落とすというのが、みんなの常識になってしまったので、善意だけではなく、ビジネスの範疇として絶対にトイレをきれいにする傾向になってきています。
朝井
へえ! マーケティングの一環として。
佐藤
そうして、ハードの面は、少なくとも東京及び都心は整ってきているけれども、もうちょっと精神的な意識改革みたいなことをしたいですよね。
朝井
そうですね。子どものときは、どうしてもおもしろ現象として捉えてしまう。「うんこ」って名前を変えたほうがいいんじゃないかと思うときもあります。
佐藤
うんこは、ちょっとおもしろいですもんね。響きが。うんこドリルとかもありますね。
朝井
そうそう。あれは、いい方向にも行ったかもしれないけれども、でもやっぱり、うんこ、うんちという音がおもしろい以上、大変ですよ。ゴキブリも、ゴキブリって名前じゃなかったら、こんなに嫌じゃないんじゃないかと思ったりするので、もっと、「さらしな」みたいな、そういう名前に変えてみたいです、一回。
佐藤
聞き心地がいいというか。新しい呼び方の提案ですね。
朝井
そうです。暴走族を珍走団と呼びましょう運動の再来感もありますが。
佐藤
確かに。いいところもあるんですけれどもね、そのおもしろみで済ましてくれているというところで……。
朝井
そうですね。うんこ、うんちのとっつきやすさみたいなところは評価しています。
佐藤
ネガに行き過ぎないというところで言うと、いいんですけれどもね。
プロフィール

佐藤満春(さとう・みつはる) 1978年生まれ。テレビ番組等の構成作家、お笑いコンビ「どきどきキャンプ」として活動中。トイレ博士としてイベントに出演したり、トイレを研究するラジオ番組のパーソナリティーなども務める。日本トイレ協会会員。掃除能力検定士(5級)。名誉トイレ診断士。トイレクリーンマイスター。

朝井リョウ(あさい・りょう) 1989年、岐阜県生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業。2009年『桐島、部活やめるってよ』で第22回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。13年『何者』で第148回直木賞受賞。14年『世界地図の下書き』で第29回坪田譲治文学賞受賞。 最新刊は『どうしても生きてる』(幻冬舎)。

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