よみもの・連載

佐藤満春トイレの輪〜トイレの話、聞かせてください〜

第3回 小説家・朝井リョウ氏

佐藤満春Mitsuharu Sato

映画の「ラストの衝撃」が苦手……

佐藤
映画とかはどうしているんですか。
朝井
大変ですよ。忘れられないのが、『ムーンライト』かな、アカデミー賞で話題になった映画を、西加奈子さんに、最後の一言がほんとうにすばらしかったから見てほしいと言われて、映画館に行ったんですよ。最後にいいセリフがあるぞ〜! と思っていたら、後半、高揚してきちゃって。高揚って便意も引き連れてくるじゃないですか。
佐藤
わかります。
朝井
最後のワンシーンは絶対に見なきゃ、絶対見なきゃと思っていたら、便意も顔を出し始めて。今、時間的に最後のほうなんだけれども、でも今行っておかないと、でも、みたいな逡巡の末、急いでトイレに立ったんです。それで、戻ってきたら、エンドロールだった。最後の一言だけ見逃したんですね。とりあえず感想は送らなきゃと思って、西さんに、すごくいい映画だったんですけれども、最後の一言だけ教えてもらっていいですかって連絡したら、「えっ?」って。あんた、何を見ていたの、って。
佐藤
そうなりますよね……。僕も、最後の一言は、とか、最後の何分は、とか……。
朝井
どんでん返し系!
佐藤
そう、どんでん返しみたいなのがすごく嫌で。そこまでの、いつのタイミングでトイレに行っておかなきゃいけないのって思っちゃうんです。
朝井
わかる。ほんとうに嫌だ。ほんとうに、嫌だ。
佐藤
伏線を最後で一気に回収していくみたいなやつ、あるじゃないですか。いや、前もって言われなければ自然に見られたのに……。
朝井
そう。
佐藤
予告されちゃうと、我慢しなきゃというか、その前にいつ行けばいいのかを逆算しちゃうんですよね。
朝井
ほんとうにそう。言わないでいてくれればね。
佐藤
そうなんですよ、知らなければ別に自然に見ていられるのに、残り十分で大逆転!とか言われると、その前に一回行っておかなきゃってなっちゃうんですよね。
プロフィール

佐藤満春(さとう・みつはる) 1978年生まれ。テレビ番組等の構成作家、お笑いコンビ「どきどきキャンプ」として活動中。トイレ博士としてイベントに出演したり、トイレを研究するラジオ番組のパーソナリティーなども務める。日本トイレ協会会員。掃除能力検定士(5級)。名誉トイレ診断士。トイレクリーンマイスター。

朝井リョウ(あさい・りょう) 1989年、岐阜県生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業。2009年『桐島、部活やめるってよ』で第22回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。13年『何者』で第148回直木賞受賞。14年『世界地図の下書き』で第29回坪田譲治文学賞受賞。 最新刊は『どうしても生きてる』(幻冬舎)。

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