連載
夫婦で行く 東南アジアの国々
「夫婦で行く 東南アジアの国々」 清水義範 Yoshinori Shimizu
第三章 ラオス(下)

 旅の六日目をコーング島のホテルで迎えた。朝食後、八時にホテルを出発。再びフェリーに乗って対岸に渡らねばならない。コーング島の船着き場付近には粗末な店が何軒か並んでいて、衣類や生活用品などを売っていた。
 人通りは少なかった。生きた鶏をいっぱいバイクに括(くく)りつけたお兄さんや、トヨタの中古トラックや、藁(わら)を山ほど積んだトラックと一緒にフェリーで対岸に渡る。
 その後バスでナーカサン港に行った。ここからはデット島へのクルーズ船が出ているのだ。そこでボートに乗り換えたところ、エンジントラブルで動けない、という。別のボートに乗り換えてやっと出発することができた。
 ボートでメコン川のたくさんの島々がある風景の中を行く。メコン川は雨期と乾期で大きく水位を変えるので、今見えている小島などは雨期には水面下に沈んでしまうのである。
 二十分程ボートに乗って、デット島の港に到着した。このあたりのメコン川は一八六四年頃からフランスが視察に入り、デット島の港は一九一四年フランス人によって作られた。フランス時代に荷物の積み下ろしに使われた埠頭跡が残っている。
 デット島はパクセーから南に百六十キロメートルの場所にある周囲七・五キロメートルの島だ。二十年程前から欧米のバックパッカーが多く訪れるようになった島で、バックパッカーの聖地と呼ばれている。そのためのバンガローがたくさんあり、ラオス最大のリゾート地だそうだ。
 この島ではほとんどが舗装していない地道で、乗り物はトラックバスだ。土埃がひどくて、ナーカサン港の近くの店にカラフルなマスクがいっぱい売られていたわけがわかった。
 私たちもトラックバスに分乗して出発する。のどかでのんびりした風景の中をしばらく走り、橋を渡ってコーン島に入る。途中多くの貸自転車に乗った欧米系バックパッカーとすれ違った。
 ソンパミットの滝に着いた。ここは精霊が棲む滝といわれている。
 昔はリーピーの滝と呼ばれていた。リーピーとは魚を獲る簗(やな)のことだ。しかし戦争中、簗に遺体がたくさんかかったのでよくないイメージができ、名前を変えたのだそうだ。現在のソンパミットとは人々が出会う場所という意味である。
 このあたりのメコン川は十三キロメートルにわたっていくつもの島があり、その間は滝になっているところが多く、水の城塞と呼ばれているのだ。
 滝は幾筋にも分かれていて、露出した赤茶色の岩の間のあちこちに白く泡立って流れ落ちている。落差はあまり大きくはないが、かなり広い範囲が滝になっていて、それを川岸に沿って見ることができるように、あたりは公園のようになっている。
 ところどころに簗がかけてあった。材木と蔓で作った船底のような形のもので、今は中はゴミだらけだが、もう少し水位があれば魚がかかるのかもしれない。



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〈プロフィール〉
清水義範(しみず・よしのり)
1947年10月28日名古屋市生まれ。愛知教育大学卒業。81年『昭和御前試合』でデビュー。88年『国語入試問題必勝法』で第9回吉川英治文学新人賞を受賞。奇抜な発想とユーモアを駆使した小説やエッセイを次々と発表。著書多数。
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第六章 マレーシア(上)
第五章 カンボジア(下)
第五章 カンボジア(上)
第四章 ベトナム(下)
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第三章 ラオス(下)
第三章 ラオス(上)
第二章 タイ(下)
第二章 タイ(上)
第一章 ミャンマー(下)
第一章 ミャンマー(上)