連載
夫婦で行く 東南アジアの国々
「夫婦で行く 東南アジアの国々」 清水義範 Yoshinori Shimizu
第四章 ベトナム(下)

 第四日目は、朝食後ホイアンのホテルから出発した。
 ベトナム中部には、昨日飛行機で着いたダナンがあり、その北にグエン朝の首都だったフエ、ダナンの南に古くから中継貿易都市として栄えたホイアンと、三つの街がある。
 昨夜到着したダナンはダナン空港があり、このあたりの中心的な街のようだ。人口は約百万人。街にはハン川が流れていて、十六世紀には寒魚村だったが、十八世紀頃から貿易港として栄え始め、ベトナム中部最大の港となった。
 ベトナム戦争の時にアメリカが大規模な米軍基地を建設したので、ガイドの言うにはアメリカが作った街だそうだ。ここから南は南ベトナムでアメリカが支援し(一九五四年から一九七五年までアメリカが後押ししていた)、フエから北が北ベトナムだったそうだ。
 昨夜到着した時、街には旧正月のライトアップが残っていて非常に明るく、モダンな印象の街だと思った。
 ベトナム中部は物価が安く、治安もいいのだとか。そのため観光客が多く、特にフランス人が多いそうだ。
 バスは田園風景の中を走り、小さな村の小学校に立ち寄った。まだ授業が始まる前なので校庭にはたくさんの小学生が遊んでいた。制服があって、赤いチェックのスカートとズボンで、上は白いシャツに赤いスカーフを結んでいる。みんな人懐こく、門の所に寄ってきて写真を撮らせてくれる。観光客が珍しかったのかもしれない。校舎は新しくてきれいだった。
 一時間半ほど走りミーソン遺跡に到着した。ここは一九九九年にユネスコの世界遺産に登録されている。
 電気自動車に乗り換えて遺跡の入口まで行く。遺跡の入口にある建物ではチャムダンスのショーをやっていた。チャムダンスはチャンパ族の踊りでいくつかのタイプの踊りがあるようだが、私たちが見たのはシヴァ神のポーズなどを取り入れたダンスだ。若い女性ダンサーが露出度の高い衣装でヒンズー教の神様たちの動きを演じる。腰をくねらせ、腕を優雅に動かし、そらせた指先の動きも繊細なダンスだった。
 ここの遺跡は二世紀から十九世紀にかけベトナム中部一帯を支配したチャンパ王国の遺跡だ。ミーソンのミーは美しい、ソンは山の意味だ。ミーソンはチャム族の聖地として繁栄した。
 遺跡は山に囲まれた盆地にあり、北には聖山マハーバルヴァータがそびえている。

ミーソン遺跡

 四世紀後半にパドラヴァルマン王が最初の木造のシヴァ神を祀る祠堂(しどう)を建てたことに始まる。この祠堂は七世紀に焼失し、レンガで再建された。その後歴代の王たちがいくつもの伽藍を建て、八〜九世紀には最盛期を迎える。そして十三世紀までに七十もの伽藍が建てられた。
 長い間森林の中に埋もれていたが、フランス植民地時代の二十世紀初頭、フランス極東学院の研究者によって発見され、調査、研究が行われるようになった。遺跡はA〜Nのグループに分類され、今でも発掘調査が続けられている。



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〈プロフィール〉
清水義範(しみず・よしのり)
1947年10月28日名古屋市生まれ。愛知教育大学卒業。81年『昭和御前試合』でデビュー。88年『国語入試問題必勝法』で第9回吉川英治文学新人賞を受賞。奇抜な発想とユーモアを駆使した小説やエッセイを次々と発表。著書多数。
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第五章 カンボジア(下)
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第二章 タイ(上)
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第一章 ミャンマー(上)