連載
夫婦で行く 東南アジアの国々
「夫婦で行く 東南アジアの国々」 清水義範 Yoshinori Shimizu
第五章 カンボジア(下)

 さらに第二東塔門を抜けると経蔵があり、北塔と南塔に挟まれて中央祠堂がある。門や建物には多くの丁重なレリーフがほどこされている。
 しかしこの寺院を最も有名にしているのは中央祠堂と二つの祠堂にある十六体の美しいデバター像だ。
 一九二三年フランスの作家アンドレ・マルローがこのデバターを盗み出そうとして逮捕されるという事件も起きている。そのデバターは「東洋のモナリザ」と呼ばれている。
 普通はこのデバター像のある祠堂の周りにはロープが張られ、間近でデバター像を見ることはできないのだが、このツアーでは特別にロープの中に入ることが許された。そのため夕方の観光になったのだが、他の観光客がいなくなると何人かの係員がやってきて、ロープの一部を外し、祠堂の建つ基壇に上らせてくれた。思いきり写真を撮り、鑑賞することができた。

バンテアイ・スレイの「東洋のモナリザ」

 マルローが盗み出そうとしたデバター以外も、どれもみな美しい。彫りが深く、保存状態もいいのだ。
 赤味を帯びた砂岩に彫られたその姿、少し腰をくねらせて立つ像は洗練されていて、優美で魅惑的である。間近で見られて大満足であった。
 観光を終え、シェムリアップに戻る。
 この日の夕食は、カンボジアの伝統的なスタイルの古民家風のレストランで、カンボジア宮廷料理だった。そう変った料理ではなく食べられるものだけを食べた。



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〈プロフィール〉
清水義範(しみず・よしのり)
1947年10月28日名古屋市生まれ。愛知教育大学卒業。81年『昭和御前試合』でデビュー。88年『国語入試問題必勝法』で第9回吉川英治文学新人賞を受賞。奇抜な発想とユーモアを駆使した小説やエッセイを次々と発表。著書多数。
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第五章 カンボジア(下)
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第四章 ベトナム(下)
第四章 ベトナム(上)
第三章 ラオス(下)
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第二章 タイ(下)
第二章 タイ(上)
第一章 ミャンマー(下)
第一章 ミャンマー(上)