連載
夫婦で行く 東南アジアの国々
「夫婦で行く 東南アジアの国々」 清水義範 Yoshinori Shimizu
第五章 カンボジア(下)

 シェムリアップから十二キロメートルほどのトンレサップ湖に到着。水上生活を営む人々の生活ぶりを見るのだ。
 この湖は乾季に三千平方キロメートル、雨季には三倍以上の一万平方キロメートル(琵琶湖の約十五倍)に膨れあがる。
 メコン川のポンプ役をしていて、乾季には通常通り水はメコン川に向かって流れるが、雨季には逆流し湖に向かって流れ、あたりは水浸しになる。
 東南アジア最大の湖でカンボジアの国土面積の約六パーセントを占める。アプサラ・ダンス・ショーのプログラムに漁師の踊りがあったように昔からクメール人にとって大切な湖なのだ。
 今はカンボジア人、チャム人(ベトナム南部の人々)、中国人が湖上生活をしている。チャム人はメコン川から上がってくる。
 水上生活者は年に十回ぐらい引っ越しをする。雨季の五回は陸に近いほう、乾季の五回は沖のほうへ引っ越す。家は浮いているので小さい船で引っ張れば引っ越しできるのだ。
 湖には約三百種類の淡水魚が生息し、東南アジアで最も淡水魚の種類が多いといわれている。その淡水魚を捕ってタイやベトナムに輸出している。
 淡水魚で干物を作る時は、臭いのだそうだ。食べられるナマズの種類は十二種類。
 トンレサップ湖のあたりでは米は年二回とれる。
 湖の近くの家は高床で高さは八メートルから十メートルくらい。今は水が引いている時期なので田んぼを作っている。田んぼのカエルを売る屋台もある。コオロギやタガメも捕って食べる。
 さて、我々はクルーズ船に乗って観光する。陸上と同じように家々が並び、教会、ガソリンスタンド、学校、標識、歯医者、バッテリー屋、店、レストランなど様々なものがある。イスラム教徒もいるのでモスクもある。

トンレサップ湖の浮かぶ教会

 湖の水は濁っていて、湖岸に近いところは臭いもきつい。
 途中にワニの養殖場があり、そこに寄ってワニやナマズを見た。ワニはシンガポールの人が買いに来て、ベルトやバッグを作るそうだ。
 そこは土産物屋も兼ねていて、ワニの剥製や蝶の標本、サソリの瓶詰など変ったお土産や、普通のTシャツ、袋物などのようなものまでなんでも売っている。私はここで絵はがきを買った。
 観光船がたくさんいる。人気のクルーズなのだ。
 ここから高速船でプノンペンまで四時間で行けるそうだ。バスだと七時間かかるのに。
 観光クルーズは終わり、街中に戻りレストランで昼食をとった。ビュッフェ方式だった。
 午後はシェムリアップの南側にあるオールドマーケットへ行った。
 このあたりにはフランス統治時代の建物も残っており、外国人向けのおしゃれなレストランやカフェ、土産物屋などが増えているのだそうだ。
 オールドマーケットには食品、貴金属、衣類、土産物などあらゆるものが揃っている。美容室まであった。

シェムリアップのオールドマーケット


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〈プロフィール〉
清水義範(しみず・よしのり)
1947年10月28日名古屋市生まれ。愛知教育大学卒業。81年『昭和御前試合』でデビュー。88年『国語入試問題必勝法』で第9回吉川英治文学新人賞を受賞。奇抜な発想とユーモアを駆使した小説やエッセイを次々と発表。著書多数。
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