連載
夫婦で行く 東南アジアの国々
「夫婦で行く 東南アジアの国々」 清水義範 Yoshinori Shimizu
第六章 マレーシア(下)

 四日目はクアラルンプール市内の観光だ。市の名前の語源をもう一度、正確に言うと、クアラは河口、ルンプルは泥の意味だそうだ。
 クアラルンプールでは今日、盆踊りがあるそうだ。そのほかにも、よさこい祭りやアニメ祭りなど、国際的なイベントをよく行うらしい。
 そんなわけで、マレーシアには休みがとても多い。正月も、マレーシア人の正月、インド人の正月、中国人の正月というようにそれぞれの正月があり、イスラム系では正月はあまり祝わないがハリラヤ・プアサという盛大なラマダン明けのお祭りがある。つまり四つの正月のようなものがあって、それは他の民族にとってもパブリック・ホリデーとして休日扱いになる。普段は自分たちの暦で生活しているが、互いの宗教を尊重して祝日は一緒に祝うのだそうだ。したがって休みも多くなるわけだ。
 また十三の州ごとに定められた祭りもある。さらにスクール・ホリデーという子供の休みがあり、それに合わせて親も休みをとり遊びに出かけたり、親戚を訪ねたりもする。いったいいつ働いているのか、というふうになってしまうのだ。
 さて、まずは王宮から観光する。
 現国王の住居で、国家行事の会場にもなる。マレーシアは立憲君主制だが、王の権力はそう強くなく、議会制民主主義の国家である。スルタンは全部で九人いて、統治者会議で互選して時の総王を決める。総王の任期は五年だ。この制度はマレーシアが小王国(首長国)の集合体によって構成されていた国だった経緯による。
 この旅行時点の王様はケダ州のスルタンのアブドゥル・ハリム・ムアザム・シャーという九十一歳の高齢者であった。王様はとてもお金持ちなのだそうだ。
 王宮はクアラルンプールの市街地の南、イスタナ通りに面した場所にあって、国王宮殿(イスタナ・ネガラ)と呼ばれている。
 中に入ることはできないが、立派な門の両側には衛兵と騎馬兵が一時間交代で立っていて、観光客の絶好の被写体になっている。しかし馬が興奮して観光客を噛んだことがあるそうだから、用心しないといけない。

王宮の門

 門の外からは白亜のアラビア風建築と、金色のドームや、よく手入れされた緑の美しい前庭が見えるので、クアラルンプールの観光スポットとして人気が高い。
 現在の王宮は二〇一一年十一月に完成したため新王宮とも呼ばれる。王宮の経費は国家予算でまかなわれるそうだ。
 ガイドが寄ってきて宗教の話をしてくれる。モスクは二キロメートル四方に一つ作るのだそうだ。ガイドは仏教徒だそうで、ドライバーはイスラム教徒だそうだ。新興宗教も多くて創価学会も盛んだそうだ。



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〈プロフィール〉
清水義範(しみず・よしのり)
1947年10月28日名古屋市生まれ。愛知教育大学卒業。81年『昭和御前試合』でデビュー。88年『国語入試問題必勝法』で第9回吉川英治文学新人賞を受賞。奇抜な発想とユーモアを駆使した小説やエッセイを次々と発表。著書多数。
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