連載
夫婦で行く 東南アジアの国々
「夫婦で行く 東南アジアの国々」 清水義範 Yoshinori Shimizu
第七章 インドネシア〈ジャワ島〉

 遺跡公園内にはホテルや博物館などがある。ボロブドゥール観光後ホテルでジュースとバナナのテンプラが振る舞われた。十一時三十分頃、近隣のいくつかのモスクからアザーンが聞こえた。
 ボロブドゥールから東に一・五キロメートル行くとブロジョナラン村にあるチャンディ・パウォンに着く。チャンディは寺院のことだそうだ。
 パウォンは台所の意味。西向きで高さ十二メートルのこぢんまりした寺院で、八二〇年頃に建てられたとされている。

チャンディ・パウォン

 寺院の役割には諸説あるが、シャイレンドラ王朝のインドラ王の遺灰を埋めたという説が有力なのだそうだ。
 ボロブドゥール寺院群の一部で、ボロブドゥール寺院への門の役割をしている。パウォン寺院はボロブドゥールで行われる儀式に行く前に、心を清めるための聖なる水を保管する場所として使われていたそうだ。
 堂内には仏像はない。外壁には天界の情景を描いたとされるカルパタール(希望の木)や半人半鳥のキンナラ、キンナリという天界の住人のレリーフがきれいに残っている。
 一九〇三年、オランダ主導で修復された。
 さらに一キロメートルほど行くと、チャンディ・ムンドゥッという寺院がある。八〇〇年頃、礼拝を行うために建てられた寺院である。
 西向きの高い基壇のある正方形の建物で、周囲には広い庭があり巨大なガジュマルの樹が印象的だ。

チャンディ・ムンドゥ

 オリジナルの部分は少ないが、外壁にはきれいなレリーフが残っている。棒をくわえて空を飛ぶ亀、ヘビと鶏とカニなどのモチーフがあり教訓を表しているのだと言われている。
 基壇の高い階段を上り、堂内に入ると暗闇の中に、中央に説法印を結ぶ釈迦(ブッダ・シャキャムニ)、両脇侍は左に観音菩薩(アワロキテスワラ)、右に普賢菩薩(ヴァジュラパニ)の石仏がある。この三体は三位一体で、説法印は仏教の教えを広めるという意味だ。ジャワ美術の最高傑作の一つで、彫刻は堂々としてたくましいが柔和で優美な表情をしている。
 また堂の入口には毘沙門天のレリーフと鬼子母神のレリーフが向かい合わせに彫られている。外壁には八大菩薩、階段脇にはジャータカ物語などのレリーフもある。
 地震で崩壊したが修復し今の形になった。
 ボロブドゥール寺院、パウォン寺院、ムンドゥッ寺院は三つでひとつのセットになっていて、一直線に並び参道で結ばれていたという説がある。
 ボロブドゥールに行くときには、まずムンドゥッで一晩お参りをして過ごす。僧侶だけが建物の中に入れる。次の日はパウォンへ行きここでも一晩お参りをして過ごす。そして髪を少し切って遺跡のなかで焼く。そのため天井は煤(すす)で黒くなっている。その焼いた髪を納める場所もあった。
 ボロブドゥールへの巡礼は、そんな順を踏んで行われたのだ。



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〈プロフィール〉
清水義範(しみず・よしのり)
1947年10月28日名古屋市生まれ。愛知教育大学卒業。81年『昭和御前試合』でデビュー。88年『国語入試問題必勝法』で第9回吉川英治文学新人賞を受賞。奇抜な発想とユーモアを駆使した小説やエッセイを次々と発表。著書多数。
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第四章 ベトナム(下)
第四章 ベトナム(上)
第三章 ラオス(下)
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第一章 ミャンマー(上)