連載
夫婦で行く 東南アジアの国々
「夫婦で行く 東南アジアの国々」 清水義範 Yoshinori Shimizu

第七章 インドネシア〈ジャワ島〉

 インドネシアの歴史の中で八世紀から十世紀までを中部ジャワ時代といい、幾つかの王国が並立していたようだ。その中にシャイレンドラ王国も古マタラム王国も含まれ、宗教は異なっても、争いはなかったものと思われる。
 五キロメートル四方の遺跡公園の広大な土地にいくつもの寺院が建っている。修復されたものは四つだけとガイドは言っていたが、ガイドブックなどを見ると修復状況は様々だがもっと修復が進んでいるように見える。
 古マタラム国の中では二つの宗教は共存していたが、その後九二〇年代におこったムラピ山の大噴火により王国は東ジャワのクディリへ移動してクディリ国となる。プランバナンは一五四九年の地震で完全に倒壊してしまったそうだ。
 修復作業は一九三七年から始まったそうで、一九九一年世界文化遺産に登録された。
 この遺跡の中心的存在はロロ・ジョングラン寺院だ。ロロ・ジョングラン寺院は八五六年に建てられたと伝えられる。サンジャヤ家とシャイレンドラ家の婚姻記念に建てられたとする説もある。
 東を正面に外苑、中苑、内苑の三重構造で大小二百三十七基の祠堂からなるインドネシア最大のヒンズー教寺院だ。

プランバナン遺跡のロロ・ジョングラン寺院

 百十メートル四方の内苑の中央にそびえるのは高さ四十七メートルの、破壊の神シヴァの神殿で、カイラス山の形を模しているが、その形は燃え盛る炎のようだと形容されるそうだ。神殿の外壁には古代インド叙事詩「ラーマーヤナ」の物語を描いた精密なレリーフがある。レリーフは彫りが深く美しい。
 シヴァ神殿の四方の堂内にはシヴァ神、アガスティア(シヴァの導師)、ガネーシャ(シヴァの息子で象の頭部を持つ)、ドゥルガー(シヴァの妻)の各像が祀られている。
 シヴァ神殿の南側には、創造の神ブラフマーの神殿(高さ三十三メートル)がある。堂内は一部屋で、四つの顔を持つブラフマーの像が安置されているそうである。回廊にはシヴァ神殿から続く「ラーマーヤナ」のレリーフがある。
 北側には再生の神ヴィシュヌの神殿がある。構造的にはブラフマー神殿と同じで、内部にはヴィシュヌ神像が安置されている。回廊のレリーフはクリシュナの物語がモチーフだ。
 三つの堂の前には、それぞれ少し小ぶりの神様の乗り物の神殿が並んでいる。シヴァ神はナンディーという牡牛、ブラフマー神はアンナという鵞鳥(がちょう)、ヴィシュヌ神はガルーダという神鳥がそれぞれの乗り物だ。
 全体的には三基の神殿が二列に並んでいるような感じで、そのスケールに圧倒された。
 さらにその周りの中苑(二百二十二メートル四方)には四列の小神殿群があったのだが、今は瓦礫の山だ。
 天気があまりよくなく、おまけに東側から見物しているので逆光で、巨大な神殿は黒々として猛々しい印象だ。緻密で複雑なレリーフもあまりよく見えなくて残念だった。



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〈プロフィール〉
清水義範(しみず・よしのり)
1947年10月28日名古屋市生まれ。愛知教育大学卒業。81年『昭和御前試合』でデビュー。88年『国語入試問題必勝法』で第9回吉川英治文学新人賞を受賞。奇抜な発想とユーモアを駆使した小説やエッセイを次々と発表。著書多数。
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第三章 ラオス(下)
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