連載
夫婦で行く 東南アジアの国々
「夫婦で行く 東南アジアの国々」 清水義範 Yoshinori Shimizu
第七章 インドネシア〈ジャワ島〉

 次に、広大な遺跡公園の中を走るトイ・トレーン(といっても汽車型のバス)に乗ってチャンディ・セウに行く。ここは仏教寺院で、千の寺院という意味を持つ。周囲に残る多くの遺跡は仏教寺院なのだ。
 チャンディ・セウはボロブドゥールと同じ頃に建てられたそうだ。
 入口には二体のクベラ(守護神)が守っている。顔つきは違うが、お腹の大きい布袋様のような体つきで愛嬌がある。

チャンディ・セウ

 ロロ・ジョングラン寺院と似た建築構造で、中央祠堂を中心に二百四十九基のペラワラ(小祠堂)があった。中央祠堂と幾つかの祠堂は修復されているが多くのペラワラは地震で倒壊し瓦礫の山という感じだ。
 大きな地震は一五四九年と、最近では二〇〇六年五月二十七日にジャワ島中部地震がおこっている。一九三七年から続いてきた修復作業がどれだけ無駄になったのかはわからないが、現在も延々と修復は続いている。
 そんなところでプランバナンの見物を終え、ジョクジャに戻り夕食をとった。中華料理なので食べやすかった。
 夕食後、ワヤンの影絵芝居を見に行った。王宮北広場の北西にあるソノブドヨ博物館の敷地にあるお堂のような建物で行われる。
 水牛の皮に細かい模様を彫り込んで、彩色して作った人形を使った伝統的な影絵芝居でワヤン・クリッという。
 起源は九世紀頃で、「ラーマーヤナ」「マハーバーラタ」を題材にしている。ジャワ哲学の詩も演じられる。古いジャワ語が使われている。
 音楽はインドネシア音楽のガムラン。スクリーンで影絵を見るほか、バックステージも見ることができる。
 人形は人形使いの語り部(ダラン)が一人で取り仕切る。その周りをガムランの楽器が取り巻き演奏している。女性コーラスも入る。
 物語はゆるゆると進み、変化に乏しい。音曲も似た感じだ。こういう古い芸能は、珍しさを味わうもので、少し退屈なものだ。
 ワヤン・クリッを見終わってホテルに戻ると、私と妻はまたもや昨日のバーへ行って、一服しながらビールを楽しむ。ウエイトレスに顔を覚えられてしまい、愛想よくされた。



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〈プロフィール〉
清水義範(しみず・よしのり)
1947年10月28日名古屋市生まれ。愛知教育大学卒業。81年『昭和御前試合』でデビュー。88年『国語入試問題必勝法』で第9回吉川英治文学新人賞を受賞。奇抜な発想とユーモアを駆使した小説やエッセイを次々と発表。著書多数。
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第三章 ラオス(下)
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第一章 ミャンマー(下)
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