連載
夫婦で行く 東南アジアの国々
「夫婦で行く 東南アジアの国々」 清水義範 Yoshinori Shimizu
第七章 インドネシア〈ジャワ島〉


 旅の三日目は早朝におきてボロブドゥールの朝日を見物するスケジュールだったのだが、三時半おきと聞いて、私たちはパスした。そうしたら、行った人たちも雨のために朝日は見えなかったそうだ。行かなくてよかった。
 午前中の観光は水の宮殿(タマン・サリ)から。もう雨はあがっていていい天気だ。旧王宮の城壁の中に入ったのだが、そこは市場があったり、普通の家がごちゃごちゃと並んでいたりして、とても雑然としていた。インドネシア独立の時、王宮に仕えていた人々に王宮内に家を作ることを許したのでこうなったのだそうだ。
 まず小さい市場に行った。物は豊富だが野菜などは新鮮ではない。設備も貧しい感じがした。
 王宮内と言っても細い路地が複雑にうねうねと続いている。貧しそうではあるが緑も多く情緒はある。賑やかな店の並んだ通りもある。鳥籠をやたら売っている一角があり、なぜなのか、と思った。混沌としていて面白い。
 突然地下トンネルがあったりする。王宮時代に使われていたものだろう。今は壁など汚れているが、明かり取りの立派な屋根がついていた。
 水の宮殿に着いた。立派な白い門があり正面から階段を上ると前庭を見渡せるテラスに出る。そこから中に入ると敷地の中は緑が多い。着替えのための部屋が並んでいる。
 一七五八年に初代スルタンによって建設された離宮だ。王様のハーレムとして使われていた。
 高い壁で囲まれた中に大小二つの豪華なプールがある。二つのプールの間には部屋があってベッドが置かれている。大きいプールでは王宮に仕える女性たちが水浴びをし、それを部屋の格子窓から王が覗き、今夜を共にする女性を選んでいたという。

水の宮殿(タマン・サリ)

 二代目スルタンの時、地震で倒壊したが、八代目のスルタンが再建して今の姿になった。
「要するにハーレムの女性選び用のプールか」
 すると妻が、
「うらやましいの?」
 と言ったが、ちっともうらやましくなかった。私はハーレムを持ちたいと思うタイプではないらしい。



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〈プロフィール〉
清水義範(しみず・よしのり)
1947年10月28日名古屋市生まれ。愛知教育大学卒業。81年『昭和御前試合』でデビュー。88年『国語入試問題必勝法』で第9回吉川英治文学新人賞を受賞。奇抜な発想とユーモアを駆使した小説やエッセイを次々と発表。著書多数。
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第七章 インドネシア〈ジャワ島〉
第六章 マレーシア(下)
第六章 マレーシア(上)
第五章 カンボジア(下)
第五章 カンボジア(上)
第四章 ベトナム(下)
第四章 ベトナム(上)
第三章 ラオス(下)
第三章 ラオス(上)
第二章 タイ(下)
第二章 タイ(上)
第一章 ミャンマー(下)
第一章 ミャンマー(上)