よみもの・連載

永遠の犬

第七回

新堂冬樹Fuyuki Shindou

 身体(からだ)が揺れた。
 地震か?
 夢うつつで、南野(みなみの)は思った。
 大丈夫ですか!?
 誰かの声がした。
 夢なのか?
 大丈夫ですか!?
 また、声がして身体が揺れた。
 眼を開けた。
 霞(かす)む視界に、樹々の枝葉と空が広がった。
「気がつきましたか!?」
 南野は、ゆっくりと首を巡らせた。
 激しい頭痛に襲われた。
 声の主は、南野の傍らに屈(かが)み心配そうな顔をしている男性だった。
 片手にサッカーボールを抱えている男性は、南野と同年代に見えた。
「ここは……」
 上半身を起こそうとした南野は、ふたたび激しい頭痛に襲われた。
 胃もムカムカとし、口を動かしただけで顔にも激痛が走った。
 瞼(ひとみ)が熱を持ち、視界が狭くなっていた。
「公園に隣接している雑木林です……それより、ひどい怪我(けが)をしていますっ。救急車を呼びたいんですが、携帯は車に置いてきていまして。携帯を持っていますか!?」
 逼迫(ひっぱく)した声で、男性が訊(たず)ねてきた。
「公園ですか……」
 ぼんやりした頭で、記憶を模索した。
「誰に襲われたんですか……いや、まずは救急車ですっ。携帯はありますか!?」
 襲われた……。
 動転する男性の言葉で、南野は記憶の断片を拾い集めた。

――テレビ業界にしがみつくからこうなる。覚えておけ。

 南野を恫喝(どうかつ)し殴りかかってくる黒いフェイスマスクをつけた男が、不意に脳裏に蘇(よみがえ)った。

プロフィール

新堂冬樹(しんどう・ふゆき) 小説家。実業家。映画監督。98年に『血塗られた神話』で第7回メフィスト賞を受賞し、デビュー。“黒新堂”と呼ばれる暗黒小説から、“白新堂”と呼ばれる純愛小説まで幅広い作風が特徴。『無闇地獄』『カリスマ』『悪の華』『忘れ雪』『黒い太陽』『枕女王』など、著書多数。芸能プロダクション「新堂プロ」も経営し、その活動は多岐にわたる。

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