第七回
新堂冬樹Fuyuki Shindou
身体(からだ)が揺れた。
地震か?
夢うつつで、南野(みなみの)は思った。
大丈夫ですか!?
誰かの声がした。
夢なのか?
大丈夫ですか!?
また、声がして身体が揺れた。
眼を開けた。
霞(かす)む視界に、樹々の枝葉と空が広がった。
「気がつきましたか!?」
南野は、ゆっくりと首を巡らせた。
激しい頭痛に襲われた。
声の主は、南野の傍らに屈(かが)み心配そうな顔をしている男性だった。
片手にサッカーボールを抱えている男性は、南野と同年代に見えた。
「ここは……」
上半身を起こそうとした南野は、ふたたび激しい頭痛に襲われた。
胃もムカムカとし、口を動かしただけで顔にも激痛が走った。
瞼(ひとみ)が熱を持ち、視界が狭くなっていた。
「公園に隣接している雑木林です……それより、ひどい怪我(けが)をしていますっ。救急車を呼びたいんですが、携帯は車に置いてきていまして。携帯を持っていますか!?」
逼迫(ひっぱく)した声で、男性が訊(たず)ねてきた。
「公園ですか……」
ぼんやりした頭で、記憶を模索した。
「誰に襲われたんですか……いや、まずは救急車ですっ。携帯はありますか!?」
襲われた……。
動転する男性の言葉で、南野は記憶の断片を拾い集めた。
――テレビ業界にしがみつくからこうなる。覚えておけ。
南野を恫喝(どうかつ)し殴りかかってくる黒いフェイスマスクをつけた男が、不意に脳裏に蘇(よみがえ)った。