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馳星周×東山彰良 『ソウルメイト』文庫化記念対談
◆馳星周×東山彰良 『ソウルメイト』文庫化記念対談◆  
映画化もされた衝撃的デビュー作『不夜城』(角川文庫)など、ノワール小説を数多く世に送り出してきた馳星周さん。新境地を招く家族小説『ソウルメイト』の文庫版刊行を記念して、第153回直木賞を受賞された東山彰良さんとのスペシャル対談が、馳さんが住んでいる軽井沢で実現! お二人の出会いは10年前。旧知のお二人に、『ソウルメイト』誕生秘話や、執筆についてのあれこれをふんだんに話していただきました。
 一番最初に会ったのっていつだったっけ?
東 山 馳さんとの最初の出会いはよく覚えています。僕がデビューして2年目の2005年、今勤務している西南学院大学に講演会でいらした時に初めてお会いしました。
 あーそうか、思い出した思い出した。
東 山 そう言うと思いました(笑)。まぁ、10年前ですからね。作品に関しては、馳さんが選考委員をしている大藪春彦賞をいただいた『路傍』(集英社文庫)を2008年に読んでもらったのが最初ですかね?
 ちゃんと読んだのは『路傍』だろうな。自分が作家になってから、他人の小説をほとんど読まなくなっちゃったからさ。自分が選考委員をしている賞の候補作でまわってくるものか、超個人的な趣味でしか小説を読まなくなっているし。大藪賞の選考の時はまだ東山のことをしょうもない奴だと思ってたけど、読んだらちゃんと力がある奴だった。
東 山 しょうもないって、ひどいなぁ(笑)。
 賞をとるっていうのは運も必要だけど、候補作の中で東山の『路傍』がダントツだった。ただ、あの小説は連作短編集で、長編に比べるとどうしてもインパクトが弱いところがある。だから、どうやって他の選考委員を説得しようかって、対策を練って選考会に行ったら、結局満場一致だった。まぁ力のある作品はそういうもんだよ。
東 山 ありがとうございます。
 ただ、あの時は才能はあるなと思ったけど、才能に溺れている感じもあったかな。
東 山 馳さんには、それから「考えて書け」と言われ続けましたね。
 『路傍』では、登場人物のチンピラ二人が哲学とか文学やらを高尚に語り出したりするからな。東山の素が出てるんだよ。そういう齟齬は直したほうがいいとは言ったよな。
東 山 散々言われましたね(笑)。僕は馳さんの作品は、『不夜城』から読んでいます。あの作品はとても衝撃的で、そのあとしばらくその世界観から抜け出せなくなってしまいました。影響を受けつつ書いた『逃亡作法』(宝島文庫)でデビューして、2作目を書いている時、書いても書いても編集者からダメ出しをされました。「馳星周は二人もいらない」って。僕は馳さんの影響が強すぎたから、2作目を書くのはキツかったですね。
 デビューして何年だっけ?
東 山 今年で12年です。
 そうか、俺は来年で20年。まさか20年も作家やってるとは思わなかったな。実は『不夜城』の時、編集者から本を出すって連絡をもらってから、9ヶ月くらい刊行されなくてさ。本当に金がなかったから、なんでもいいから早く出してくれって気持ちだった。もう家賃が払えない、やばいって時に、競輪で勝負をかけた車券が当たってなんとかなったんだよ(笑)。
東 山 馳さんでもそんな時期があったんですね。
 直木賞受賞作の『流』(講談社) なんだけど、いい作品だって話は色々なところで聞いてるよ。それを聞いて、思ったんだ。東山がいい作品を書けるのは俺のアドバイスのおかげだぞっていうのは分かってるのかな? って(笑)。
東 山 分かってますよ! 今、分かりました。馳さん、それを言いたいがために僕を軽井沢に呼んだんですね(笑)。
 まぁな。大藪賞の選考会の後や授賞式の時に一緒に飲んでいて、東山がおじいちゃんの話をしたんだよな。面白いから書けよって言った覚えがあるけど……。
東 山 そうでしたね。はい、まだその話は書いていません。
 でもその時に聞いた話の流れがあって、父親の話を着想とした『流』を書いた、と。
東 山 そうなんです。


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〈プロフィール〉
馳星周
1965年北海道生まれ。横浜市立大学卒。96年デビュー作『不夜城』で第18回吉川栄治文学新人賞、98年『鎮魂歌』で第51回日本推理作家協会賞、99年『漂流街』で第1回大藪春彦賞受賞。ほかに『生誕祭』『ダーク・ムーン』『約束の地で』『雪炎』など多数。
東山彰良
1968年台湾生まれ。73年より日本で生活。91年大学卒業後東京にて航空会社勤務の後、大学院に進学。経済学修士課程を経て、大学の非常勤講師をする傍ら、執筆。2002年『逃亡作法 TURD ON THE RUN』にて第1回『このミステリーがすごい!』大賞・読者賞をダブル受賞。15年『流』で、153回直木賞受賞。
馳星周 著
『ソウルメイト』(集英社文庫)発売中
東山彰良 著
『路傍』(集英社文庫)発売中