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2016年新春座談会 安部龍太郎×諸田玲子×澤田瞳子
◆2016年新春座談会 安部龍太郎×諸田玲子×澤田瞳子◆  
司会
新年あけましておめでとうございます。
まず、2016年はどんな年にしたいとお考えですか?
澤田
2015年末で小説家デビューして5年になりました。「10年ひと山」と言いますから、ちょうど半分終わったところ、ここからが1回目の後半戦です。 これまで、短編連作の仕事が多かったのですが、2015年から長編連載にも取り組み始めています。特に来年、2017年には初めて新聞の連載に挑戦することになりました。今日は長い作品をどうやって連載していくのか、先生方にご教授いただきたくて……。
安部
いやいや、デビュー作の『孤鷹の天』からできているじゃない。
澤田
できてないですよ。先日、安部先生に「長編の連載ってどうやればいいのですか?」と伺ったら、「短編小説をひと山ひと山書いていけば、そのうち長編になるんだよ」と……。
安部
新聞の連載の場合、期間もあるからね。1年間の連載予定で、延びてもせいぜい2か月程度。だから、書いていて「期間が足りないな」と思った時は、1章分くらい書いたつもりで飛ばしてしまう。そして、本になる時に、1章分きっちり書いて入れる形にすると、後半になって内容が薄くなるような弊害が起こらない。でね、読者は新聞を読んでいる段階では、どこが飛ばされたか分からない。だって、書いているのは我々だしね。本になって読んでみて、「あっ、この部分は後で加筆したのね」と気付くわけです。
諸田
私も新聞連載の仕事が多いのですが、確かに後で手を入れようと思って書いていますね。
それに、新聞連載って、他の作品以上に最初が肝心。連載の途中から読むことはあまりない代わりに、読者は最初に「面白い!」と思ったら、最後まで読んでくださる。だから、いつもの自分の書くペースをちょっと上げて、最初にドンと惹きつけるように書くことが大事だと思います。
安部
そうだね。コース料理に喩えたら、前菜が出てというよりは、いきなりメインディッシュの前の魚料理くらいから始める感じかな。
諸田
でも、まずはあまり色々考えず、その世界に没頭したらいいと思うわ。書いているうちに、どんどん楽しくなりますよ。
澤田
ありがとうございます。
諸田
私は昨年は単行本を3冊、文庫も3冊出しましたが、ここ2年ほど意識的にペースダウンしていたので、今年は心機一転、新たな気持ちで書きたいと思っています。
と言っても、数多く書くというのではなく、新聞連載中の「梅もどき」が本になる前にもう一度手を入れ直すなど、1冊1冊取り組みたいですね。流れで何年もやってきたことを、今年はちょっと立ち止まって、時間をかけたい。そう言えば、何年か前に安部さんも同じようなことをおっしゃっていましたよね?
安部
僕は『等伯』を書かせていただいた時が、そんな感じでした。等伯に関する資料をボチボチ集め始めたのが、連載がスタートする5年位前。本格的に構想を練り始めたのは1年位前からだと思う。確か2010年が等伯没後400年で、その時に東京国立博物館で開催していた「没後400年 特別展『長谷川等伯』」で「松林図屏風」を見た時からじゃないかな。で、等伯がこの屏風絵を描くシーンをクライマックスにすると決めて、じゃあどうしたら等伯がこの絵に到達する姿を描けるだろうと、考えたわけね。


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〈プロフィール〉
安部龍太郎
1955年福岡県生まれ。図書館に勤務するかたわら、短編で日本全史を網羅した『血の日本史』で90年デビュー。2005年『天馬、翔ける』で第11回中山義秀文学賞を受賞。13年『等伯』で第148回直木賞を受賞。著書に『信長燃ゆ』『海神』『関ヶ原連判状』『恋七夜』ほか多数。
諸田玲子
静岡市生まれ。上智大学英文学科卒。1996年「眩惑」でデビュー。2003年『其の一日』で吉川英治文学新人賞を受賞。07年『奸婦にあらず』で新田次郎文学賞受賞。『あくじゃれ』『末世炎上』『昔日より』『月を吐く』『髭麻呂 王朝捕物控え』『恋縫』など平安から江戸まで幅広いジャンルの話題作を発表する気鋭。
澤田瞳子
1977年京都府生まれ。同志社大学大学院博士前期課程修了。専門は奈良仏教史。2011年デビュー作『狐鷹の天』で第17回中山義秀文学賞を最年少で受賞。12年『満つる月の如し 仏師・定朝』で第32回新田次郎文学賞と第2回本屋が選ぶ時代小説大賞を受賞。作品に『日輪の賦』『ふたり女房』ほか。
構成・戸高米友美
撮影・久保陽子
会場・天喜