連載
「沖縄コンフィデンシャルⅡ」
第一章 真実の行方 高嶋哲夫 Tetsuo Takashima

 その日の夜、所轄の親泊から電話があった。
「赤堀課長補佐、どうなってるんですか」
 親泊の、憤りの混じった声が飛び込んでくる。
 優子を襲った引ったくり犯について、数時間おきに新しい情報がないか聞いてくるという。相手が準キャリの警部、本庁捜査二課の課長補佐なので、ないがしろにはできないで困っているらしい。
「あいつは儀部が関わる事件を担当してきたし、優子の知り合いでもある。だから気になるんだろう。エリート意識の塊のような奴だが、根はいい奴だ。面倒がらずに付き合ってやってくれ。ただし、彼が何を聞いたか、必ず俺に連絡をくれ」
 反町は赤堀が赴任したときの歓迎会で、酔っ払って眠り込んだ赤堀をマンションまで送っていった。誰が赤堀を送っていくか、若手がじゃんけんをして反町が負けたのだ。そのとき、部屋まで上がらされて、さんざん愚痴を聞かされた。彼は〈キャリア〉と〈東京〉に異常なまでのコンプレックスを持っている。赤堀自身は準キャリアで大阪出身なのだ。それ以来の付き合いで、今では上司というより同い年の仲間という意識が強い。
 本人は沖縄に回されたのはキャリアではなく、準キャリアであるせいだと信じ込んでいる。キャリアは国家公務員採用T種試験合格、準キャリアは国家公務員採用U種試験に合格した者などで、キャリアに準ずる扱いを受ける。
「でも、事件は引ったくりで決まりです。ここ数か月で、近辺で似たような事件が数件ありました。何人か容疑者が上がっています」
「駐車場の防犯カメラはどうなってる」
「あの場所は死角になってるんです。偶然なのか、犯人が知ってて、犯行に及んだのか」
 親泊の声のトーンが落ちた。反町の心に暗いモノがよぎった。この事件は長引くかもしれない。
「おまえらの動きも必ず俺に報告するんだぞ」
 反町は叩き付けるように受話器を置いた。
 具志堅がパソコンから顔を上げ、じろりと睨んだ。



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〈プロフィール〉
高嶋哲夫(たかしま・てつお)
1949年岡山県玉野市生まれ。慶應義塾大学工学部卒業、大学院修士課程修了。
日本原子力研究所研究員を経て、カリフォルニア大学に留学。
79年、原子力学会技術賞を受賞。
94年『メルトダウン』で第1回小説現代推理新人賞を受賞。
99年『イントゥルーダー』で第16回サントリーミステリー大賞・読者賞をダブル受賞。
著書に『M8 エムエイト』『TSUNAMI 津波』『原発クライシス』『首都崩壊』など多数。
※本サイトで連載していた『琉球コンフィデンシャル』は『沖縄コンフィデンシャル 交錯捜査』に改題し、集英社文庫より好評発売中です。本連載は、その続編となります。
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第一章 真実の行方