連載
「沖縄コンフィデンシャル」
第三章 沖縄、そして東京 高嶋哲夫 Tetsuo Takashima

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 反町(そりまち)が県警本部に戻ったとき、スマホが鳴り始めた。
 サイバー対策室の平良(たいら)からだ。
〈あれ、何とかできま――〉
「すぐ、行く」
 反町は途中でスマホを切ると、階段に向かってダッシュしていた。
 サイバー対策室に飛び込むと平良のところに直行した。
 平良はサンドイッチを食べながら、コンピュータのディスプレイを見ている。
「仕事の片手間にやってたんで、時間がかかりましたが――」
「ファイルはどこだ」
 平良が身体の位置をずらした。ディスプレイには、英語の文章と複数の表があり、細かい数字が並んでいる。最後に一枚のカラーイラストが付いていた。最初のページには〈シークレット〉の判が押してある。
 反町は英文を目で追っていった。
 ポケットからフラッシュメモリーを出して平良に手渡した。
「これにコピーしてくれ。他にもロックのかかったファイルがあっただろ。それも見せてくれ」
「とりあえず、一つだけ。ロックの種類が違うんです。よほど用心深い奴です。何となくパターンが分かったので、時間はかからないと思いますが」
「今度は片手間じゃなく、メインでやるんだぞ。本部長表彰が待ってるから」
 反町は平良の手からサンドイッチを取って頬張った。

 一課の自分のパソコンの前に座ると、フラッシュメモリーを開けた。
 イラストは大型リゾート施設の外観図だ。プライベートビーチに面してプールが二つ、両端にホテルがある。中央部は店舗が並び、野外舞台のある広場になっていた。食事をしながら、様々なイベントを楽しむことができる。まわりは塀で取り囲まれている。一般の人向きというより、富裕層を対象にしたものだろう。
 タイトルの英文を指でたどった。
「新、大型、リゾート、施設、建設、計画、沖縄……」
 単語を一つ一つ拾っていく。タイトルだけはつながった。沖縄、新大型リゾート施設建設計画。
 本文の英語になると五分で諦めた。数字の表も同じだった。施設の説明と建設費の数字らしいことは分かるが、詳細はまったく理解できない。自分の学識、能力を超えている。
「こんなの、どう見ても俺にはムリだ」
 呟いてみたがどうにもならない。
 具志堅(ぐしけん)に相談したいが、彼にもこの英文と数字を読み解くことはムリだろう。怒鳴られるのがおちだ。
 ノエルが頭に浮かんだが、やはり数字は難しい。彼女の頭も文系思考だ。
 行き着くのは一人だ、反町はフラッシュメモリーを持って二課に行った。
 赤堀(あかぼり)はまだいた。



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〈プロフィール〉
高嶋哲夫(たかしま・てつお)
1949年岡山県玉野市生まれ。慶應義塾大学工学部卒業、大学院修士課程修了。
日本原子力研究所研究員を経て、カリフォルニア大学に留学。
79年、原子力学会技術賞を受賞。
94年『メルトダウン』で第1回小説現代推理新人賞を受賞。
99年『イントゥルーダー』で第16回サントリーミステリー大賞・読者賞をダブル受賞。
著書に『M8 エムエイト』『TSUNAMI 津波』『原発クライシス』『首都崩壊』など多数。
※本サイトで連載していた『琉球コンフィデンシャル』は『沖縄コンフィデンシャル 交錯捜査』に改題し、集英社文庫より好評発売中です。本連載は、その続編となります。
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第三章 沖縄、そして東京
第二章 過去の亡霊
第一章 真実の行方