連載
「沖縄コンフィデンシャル」
第四章 過去の亡霊 高嶋哲夫 Tetsuo Takashima

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「どこに行くんだ」
 助手席に乗り込んだ赤堀(あかぼり)が反町(そりまち)のほうに身体を倒し、小声で聞く。
 反町は答えず、重そうなデイパックを持った具志堅(ぐしけん)が後部座席に座ったのを確認して、表通りに出た。
 バックミラーで具志堅を見ると、顔を背けるようにして外を見ている。
「新情報だ。ホテルに着いたら話してやる。東京の二人をラウンジに呼び出しておけ」
 反町は前方に目を向けたまま赤堀に言った。
「ホテルにいないかもしれない」
「だったら、すぐに帰ってホテルで待つように伝えろ」
 赤堀がスマホを出してタップしている。反町と具志堅のただならぬ様子を感じ取ったのだろう。
 窓際に寄り、スマホを手で囲い込んで声を潜めて話している。漏れ聞こえてくるのは敬語だ。
「ラウンジで待っているそうだ。これで下らない話なら、交番勤務に回すよう手を尽くしてやる」
 反町は沖縄セントラルホテルに向かってアクセルを踏み込んだ。

 三人がホテルに入ると、ラウンジで尾上(おがみ)と木島(きじま)が反町たちのほうを見ていた。
「重要な話があると言うので連れてきました。もしつまらない――」
 赤堀を押しのけた具志堅が、デイパックからノートパソコンを出して二人の前に置いた。反町がフラッシュメモリーを差し込む。
「大利根(おおとね)たちが計画しているのは、ただのリゾート施設じゃない。カジノ付きの総合リゾート施設だ」
 赤堀と東京の二人はノートパソコンの画面に見入っている。尾上が木島に同意を求めるように見て、キーを押して画面を進めていく。
 木島が最初に顔を上げた。
「これが、もう一つのファイルですか」
「一年前のものだ。計画はさらに進んでいるんだろうな」



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〈プロフィール〉
高嶋哲夫(たかしま・てつお)
1949年岡山県玉野市生まれ。慶應義塾大学工学部卒業、大学院修士課程修了。
日本原子力研究所研究員を経て、カリフォルニア大学に留学。
79年、原子力学会技術賞を受賞。
94年『メルトダウン』で第1回小説現代推理新人賞を受賞。
99年『イントゥルーダー』で第16回サントリーミステリー大賞・読者賞をダブル受賞。
著書に『M8 エムエイト』『TSUNAMI 津波』『原発クライシス』『首都崩壊』など多数。
※本サイトで連載していた『琉球コンフィデンシャル』は『沖縄コンフィデンシャル 交錯捜査』に改題し、集英社文庫より好評発売中です。本連載は、その続編となります。
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Back number
第四章 過去の亡霊
第三章 沖縄、そして東京
第二章 過去の亡霊
第一章 真実の行方