よみもの・連載

お料理レシピで謎解きを

最終話 かけがえのない誕生日ケーキを分け合う

友井 羊Hitsuji Tomoi

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 夏希(なつき)ちゃんが杉野(すぎの)くんお手製のスコーンにクロテッドクリームをたっぷり載せてかじると、制服にたくさんの破片が落ちた。
「このクリーム、スコーンにめちゃくちゃ合うな」
 続いて私も口に運ぶ。スコーンは小麦粉の風味が活(い)きている。重量感があり、こってりとしたクロテッドクリームとの相性は定番と言われるだけあって完璧だ。
 食べ慣れていない私もスコーンが口元からぼろぼろと崩れて、夏希ちゃんと似たような状態になる。杉野くんも慎重にかじった。
「スコーンといえばクロテッドクリームですよね。僕、付け合わせはスコーンに限らずクリーム系が好きなんですよ。クロテッドクリームは乳脂肪分が多いから、たくさん食べると罪悪感がすごいですけど」
 今日は家庭科準備室でのお茶会だ。梅雨の頃に初めて開いて以降、月に一度くらいの頻度で定期的に行っている。今日はお茶会に定番のスコーンを杉野くんが作ってきてくれたのだ。
 写真部の草村(くさむら)さんが、眼鏡の位置を直しながら杉野くんに訊(たず)ねる。
「そんなに高カロリーなの?」
「乳脂肪分が六〇%なんです。普通の生クリームは乳脂肪分四〇%前後が主流ですね」
「そいつはやばいな」
 夏希ちゃんが顔をしかめるけれど、クロテッドクリームをたくさんつけるのをやめない。
「この前、妹の誕生日だったんだが、たしかにあのとき食べたショートケーキのクリームのほうがあっさりしているな。全部同じかと思っていたけど、クリームでも色々違いがあるんだな」
「千秋(ちあき)ちゃん、誕生日だったんだね」
 知らなかったから仕方ないけれど、お祝いできなかったのを残念に思う。だけど面識があるとはいえ、友達の妹にプレゼントを贈るものなのか、友達の少ない私には距離感がわからない。
「名前の通り、秋に生まれたんだ。ちなみに私も同じパターンで誕生日は夏休みの真っ最中だ。そういえばみんなの誕生日はいつなんだ?」
「僕は二月だからだいぶ先ですね」
 杉野くんが真っ先に返事をして、続けて草村さんが口を開く。
「私は四月なんだ。クラス替えがあると、親しくなる前に誕生日が過ぎちゃうんだよね」
 二人が答えたため、私は仕方なく口を開いた。
「えっと……、私は十月五日だよ」
 夏希ちゃんが身を乗り出してきた。
「もうすぐじゃないか」

プロフィール

友井 羊(ともい・ひつじ) 1981年群馬県生まれ。2011年『僕はお父さんを訴えます』で「このミステリーがすごい!」大賞優秀賞を受賞し、12年に小説家としてデビュー。他の著書に『スイーツレシピで謎解きを 推理が言えない少女と保健室の眠り姫』『無実の君が裁かれる理由』「スープ屋しずくの謎解き朝ごはん」シリーズなどがある。

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