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11)都会の中の空中庭園 |
「ぼーっとしてると何も見つからないぞ」と昔、オヤジに言われたものである。
その言葉こそ脳を活性化させる重要な意味を持っていたのだと、最近ますます思うようになってきた。
事実、最近の認知科学からすると、どうも人間の視覚というのは、だまされやすかったり、目の前に物があっても、状況を変えてしまうと、それを無視してしまうようなことがあるようだ。
つまり見えているようで見えていないということが起こるのだ。
だからオヤジの忠告はさすがというわけである。
新しい発見をするために、旅行は最高であろう。まったく新しい環境なので、見てやろうという意識があまりなくても、何かを発見するので、空間体験としてもいいはずである。しかし、そうは言っても、毎回旅行へ行くわけにもいかない。
だからこそ、日常の中で何かを見つけなければいけないし、見つけられる能力を身につける必要があるのだ。
昆虫が好きな人が、道ばたの草にとまっている虫に感動するような能力と言えばいいだろう。
で、とある日曜日、新宿の高島屋デパートへでかけた。
そこには、そば粉のクレープを出す店があり、久々にそれを食べたくなったからだ。
正式にはフランス ブルターニュ地方のそば粉のクレープはガレットというそうで、この地方では、そばのクレープが飢饉を何度も救ったらしい。同じそば粉でも日本のようなそばにならなかった理由はわからないが、オヤジ世代は、どうしてフランスでそば粉なのという疑問を持ってしまうだろう。
南フランスのクルーズでニースに寄港したとき、町中のレストランでニースサラダを頼んだ。これがひどくまずくて頭にきて、食べ直そうと思い、町を歩いていたらクレープ店を発見し、そのクレープがおいしかったことを覚えている。
その記憶があったから、非常においしいと噂の新宿高島屋の13階にある「ブレッツ カフェ クレープリー・ル・ブルターニュ」というクレープ店に来たというわけである。 |
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クレープの誘惑。 |
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〈プロフィール〉 |
1952年山梨県生まれ。聖マリアンナ医科大学卒。同大学第二内科助教授を経て作家に転身。医学博士。専門は神経内科。著書に「使命を忘れた医者たち」「医者がぼけた母親を介護する時」「もの忘れを防ぐ28の方法」等著書多数。
著者ホームページ
http://yoneyone.com |
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