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24)山を読む |
相変わらずの無計画な小旅行であった。
東京近郊の温泉ということで、奥湯河原へ行った。都内からは、東海道線一本で行けるので、なんとも楽ちんな旅である。
別に私は温泉に興味はないし、個室露天風呂にもそれほど魅力を感じなかった。また大げさな旅館の料理にも感動はしなかった。
夜到着したので、外の川の流れる音(堰から激しく水が落ちる音)が響いてうるさいくらいだったが、そのまま寝てしまった。
しかし翌日、部屋のベランダに出て、外を眺めたら、印象がすっかり変わった。
そこで初めて、山は見るのではなく、読まねばいけないことがわかった。
旅館の目の前には、山が迫っていて、景色を鳥瞰(ちょうかん)できるわけではない。山の緑に完全に包まれている。そのまま、ベランダでずっと山を見ていたら、初めていろいろ見えてきたのだ。この山間(やまあい)の空間体験はいままでにないものだった。 |
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これぞ「山を読む」 |
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〈プロフィール〉 |
1952年山梨県生まれ。聖マリアンナ医科大学卒。同大学第二内科助教授を経て作家に転身。医学博士。専門は神経内科。著書に「使命を忘れた医者たち」「医者がぼけた母親を介護する時」「もの忘れを防ぐ28の方法」等著書多数。
著者ホームページ
http://yoneyone.com |
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