3.11 東日本大震災から10年。

集英社文庫今だから読みたい本
3.11──東日本大震災から今年で10年。
震災を題材にした小説、ノンフィクションを紹介します。
桐野夏生さん、三浦英之さんはじめ、著者による作品に寄せる思いと、
あの日を被災地で迎えた元書店員の田口幹人さんの推薦コメントも。
たぐち・みきと
1973年、岩手県西和賀町出身。盛岡市のさわや書店フェザン店勤務時は熱のこもったPOP展開などで数々のベストセラーを生みだした。現在は楽天ブックスネットワーク勤務。「書店人」を自称し、新たなプラットフォームの在り方を模索中。

圧倒的スケールのディストピア小説

『バラカ(上・下)』 桐野夏生

桐野夏生撮影=高橋依里

津波に襲われた仙台空港がようやく復旧したと聞いて、現地に向かったのは4月の初旬だっただろうか。空港の周囲には、廃車が山のように積まれていた。どの車もひしゃげ、泥で汚れている。そして閖上地区も、一面泥に覆われていた。どぶのようなにおいが鼻につく。自動車が何台も泥に刺さったままになっていて、辛うじて残った家は片側が千切れたドールハウスのようだ。女性が一人、泥の海に向かって何か祈っていた。遠くでは、自衛隊が遺体を探す作業を続けている。二度と忘れることのできない光景に、何も言葉は出なかった。それでも、勇気を振り絞って書いたのが『バラカ』だ。言葉は無力だ。物語も嘘っぱちだ。私も力不足だ。それでも、書かずにいられなかった。──桐野夏生

【田口幹人さんより】
「虚構」と「現実」というふたつの世界をつないだパイプは、まさに原発問題の急所だった。本書は、忌わしいリアル感を読者に与えるだろう。

現地に住み込んだ記者が見た真実

『南三陸日記』 三浦英之

三浦英之

あの日、新聞では書き綴れなかったいくつもの「風景」がある。損壊した遺体が散らばる海辺の風景だけでなく、そこには家族や家を失った悲しみから立ち上がろうとする、無数の人々の息吹と眼差しがあった。現地の避難所で寝起きしながら、私は彼らの声を集めて回った。彼らは泣き、わめき、最後に一言、「伝えてくれ。次の世代が同じ悲しみを味わわないように」と言った。その声や想いを綴った集大成が文庫版「南三陸日記」です。──三浦英之

【田口幹人さんより】
生きることは、守ることであるということを、残された者を守ろうとする優しい眼差しで綴られた本書が教えてくれた。

復興への祈りを込めた人と馬の物語

絆 走れ奇跡の子馬

島田明宏

【田口幹人さんより】
被災直後の街の様子に、守り続けてきた伝統ある南相馬の野馬追いへの情熱、そして人間と馬の温かな感情が交錯した優しい物語だった。

震災直後を描いた社会派サスペンス

アポロンの嘲笑

中山七里

【田口幹人さんより】
震災後の混乱する福島で起きた一件の殺人事件を通じ、極限状態に置かれた人間の生き様を描いた本書は、克明に震災という出来事を記憶させてくれた。

〉弊社販売部・シマシマのオススメコメントも

故郷を9年追った執念の書

心の除染 原発推進派の実験都市・福島県伊達市

黒川祥子

【田口幹人さんより】
原発事故後のあまりにも理不尽な現実。これが現代日本で起こったことだとは、にわかに信じられなかった。あらためて伝えられない事実があるのだと知った。

触れられなかった3.11の裏側

震災風俗嬢

小野一光

【田口幹人さんより】
肉体的な疲労と同じだけの精神的な疲労の蓄積を実感させてくれた、「人肌に触れないと正気でいられない」という風俗嬢の言葉が強く印象に残っている。

富士山噴火

歴史は繰り返される

『富士山噴火』高嶋哲夫

高嶋哲夫

1707年、宝永東南海地震が起こりました。その49日後、富士山が噴火しました。宝永大噴火です。その時の火山灰は遠く房総半島まで届きました。南海トラフ巨大地震が近いと言われています。世界でもM8クラスの地震の後には、高い確率で近くの火山が噴火しています。──高嶋哲夫

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眠る魚

3.11以降の日本を鋭い視点でとらえた著者の絶筆

眠る魚

坂東眞砂子

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お迎えに上がりました。国土交通省国土政策局幽冥推進課5

人の遺した想いを繋ぐ、あやかし公務員小説

お迎えに上がりました。国土交通省国土政策局幽冥推進課5

竹林七草

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雪炎

震災以前から原発を取材して編まれた長編小説

雪炎

馳星周

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マダム・キュリーと朝食を

震災の年に生まれた少女の視点で、時空を自在に行き来する小説

マダム・キュリーと朝食を

小林エリカ

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祈りの朝

東日本大震災からの再生と家族の希望を描く

祈りの朝

矢口敦子

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牛と土 福島、3.11その後。

家畜の殺処分に抗う牛飼いたちの戦いの記録

牛と土 福島、3.11その後。

眞並恭介

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トモダチ作戦 気仙沼大島と米軍海兵隊の奇跡の“絆”

注目された被災地救援の立案者が語る真実

トモダチ作戦 気仙沼大島と米軍海兵隊の奇跡の“絆”

ロバート・D・エルドリッヂ

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