山内マリコ あのこは貴族 すべての女性たちへ── 映画化決定の話題作! 監督・脚本/岨手由貴子 配給/東京テアトル・バンダイナムコアーツ 山内マリコ あのこは貴族 すべての女性たちへ── 映画化決定の話題作! 監督・脚本/岨手由貴子 配給/東京テアトル・バンダイナムコアーツ

あのこは貴族

内容紹介

東京の「上流階級」を舞台に描かれる、アラサー女子たちの葛藤と成長。
女性たちにかけられた呪いを解く、新たな物語
東京生まれの箱入り娘・華子は、20代後半で恋人に振られ、結婚を焦ってお見合いを重ねた末、ついにハンサムな弁護士「青木幸一郎」と出会う。一方、地方生まれの上京組・美紀は、猛勉強して入学した慶應大学を金欠で中退。夜の世界を経て、今はIT企業で働いている。腐れ縁の男友達「幸一郎」とのだらだらした関係に悩み中。生まれも育ちもまったく違う二人が、同じ男をきっかけに出会うとき、それぞれ新たな世界が拓けて──。
好評発売中
定価:本体640円+税
カバーデザイン:大島依提亜
イラストレーション:Janet Hill ”Mai.”
ISBN:978-4-08-745875-6

著者紹介

山内マリコ

山内マリコ(やまうち・まりこ)
1980年、富山県生まれ。2008年に「女による女のためのR-18文学賞」で読者賞を受賞。12年『ここは退屈迎えに来て』で作家デビュー。地方に生きる女子たちのリアリティを描き出す作風で話題となる。主な著作に『アズミ・ハルコは行方不明』『パリ行ったことないの』『選んだ孤独はよい孤独』『あたしたちよくやってる』など。

映画化によせて

原作:山内マリコ コメント

4年前、岨手監督の『グッド・ストライプス』を観たとき、シンパシーとともにものすごい才能を感じました。こういう作品をもっと観たいんだよ!と心から思いました。以来ずっと次回作を待ち望んでいた彼女の新作が観られることに、一ファンとしてとても喜んでいます。東京のいまとシスターフッド、女性を分断するものからの解放。原作に込めたものを、岨手監督に託したいと思います。

監督・脚本:岨手由貴子 コメント

“東京”という街を描いた『あのこは貴族』を、オリンピック前の東京で撮影できることに、とてもワクワクしています。
収入、容姿、出自で住み分けされ、同じ場所にいてもそれぞれが違う世界を生きる、特異なマナーが存在する街。
そこで生きるある世代のレクイエムとして、また2019年の東京の記録として、この映画を作り上げたいと思っています。

(そで・ゆきこ:1983年長野県生まれ。大学在学中、篠原哲雄監督の指導の元で製作した短編『コスプレイヤー』が水戸短編映像祭、 ぴあフィルムフェスティバルに入選。2008年、初の長編『マイムマイム』でぴあフィルムフェスティバル準グランプリ、エンタテインメント賞を受賞。15年『グッド・ストライプス』で劇場用長編映画デビュー。同作で第7回TAMA映画賞最優秀新進監督賞、第20回新藤兼人賞金賞を受賞。)

書評

東京のヒエラルキーが崩れるとき 山崎まどか (コラムニスト、翻訳家)

東京は様々な人が集まる都会だが、実のところは江戸時代から続く目には見えない境界線があり、人々は分断されている。階級と地域が密接に結びついているのだ。二十三区でいうと、かつては武家屋敷が立ち並ぶ場所だった千代田区、港区、文京区などは、先祖代々そこに住む旧家の人々が今も数多く住んでいる。『あのこは貴族』の主人公の一人である榛原華子(はいばらはなこ)は渋谷区松濤(しょうとう)の実家に住むお嬢様だが、東京には更に上の階層が存在するのである。華子はお見合いで出会って婚約した相手、青木幸一郎の実家を通してその世界を知ることになる。ところが、政治家を輩出する家柄の青木によって知ったのは、そんな東京の中枢だけではなかった。彼との出会いはそれまで知り得なかった、東京に住む外部≠フ人間も連れてきたのである。

もう一人のヒロインで、青木と関係を持つ時岡美紀(ときおかみき)は猛勉強して慶應大学に入った地方出身者だ。一流大学への進学と上京によって彼女の人生は大きく好転するはずだったが、家庭の事情や不況がそれを阻む。大学を中退し、ホステス業を経て、会社員としてのキャリアを築かざるを得なかった彼女は、持てる者と持たざる者の差を思い知ることとなる。

恵まれた環境に無自覚な華子と、辛酸を舐めながら自分の足場を作ってきた美紀。住む場所は同じ東京でも、本来ならば交わらないはずの二人の邂逅(かいこう)によって、ドラマが動き出す。一人の男性を挟んでお互いを知ることとなった二人だが、彼女たちの出会いの背後には、変わっていく東京の姿がある。再開発や時代の流れによって、地域と密接に結びついていた階級が瓦解していく様子が垣間見えるのだ。二人の主人公の人生もまた変わっていくが、それは単純なヒエラルキーの中の上昇や下降ではない。崩れていくシステムからの逸脱であり、彼女たちは自身の足で立つことでささやかな自由を手にいれる。それは東京の権力構造の当事者になり得なかった女性たちならではの特権でもあるのだ。

(「青春と読書」二〇一九年六月号より)

文庫担当編集者より

東京に生まれ育って三十数年。東京の魅力も難点も、なんとなくわかったつもりでいました。
が、本作を読んで仰天。こんな東京、知らなかった・・・・・・。
舞台となるのは東京の〈上流階級〉。自分とは縁遠いように感じられるその世界が、どんなふうに「私たちの東京」を動かしているのか。東京生まれの箱入り娘・華子と地方生まれのOL・美紀。境遇の全く違う二人を通して見えてくるそれぞれの「東京」の姿に、自分がいかに無自覚にこの街で生きてきたか気づかされました。

そしてアラサー女子として、もう一つ大きく心動かされたのは、描かれる女同士の関係性です。
女同士だからこそ助け合えること、認め合えること、分かち合えるものがあること。普遍的で新しい関係性を、鮮やかに、切実に、すがすがしく描き出していることも、本作の大きな魅力です。
じゃあ女性にとっての敵は男性なのか? きっと本当はそうではないことも、本作は教えてくれます。ラストシーンは、ぜひあなたの目でお確かめください。

他者と出会うことで、時に傷ついてしまうこともある(相手を傷つけてしまうことも)。けれどそれ以上に、人と人との出会いは、思いもよらない新しい世界をたくさん運んできてくれる──そのポジティブな可能性を何度だって信じさせてくれる作品です。