中島らもの 特選 明るい悩み相談室
その1 ニッポンの家庭篇


中島らも

   私の料理に「おそまつさま」と言う義母

 らもさん聞いてください。私、前から気になっていることがあるんです。結婚して義父義母と同居してからなんですが。みんな一緒に食事をして、そして私が「ごちそうさまでした」と言うと「はい、おそまつさまでした」と必ず言う義母。エ〜、だって私が作ったんだョ。“おそまつ”だなんて。そんなことでも、毎回言われていると腹も立つというもんです。こんなときどうしたらいいでしょうか。
                     (大宮市・おそまつ嫁・33歳)

 もうふた昔も前ですが、酒盛りをした流れで、僕のところにハードロック野郎が一人泊まりにきたときの話です。ハードロック野郎は突っ張っているので、酒盛りのときでも物を食わないのです(その割には太っていて、ぽってりした顔を長髪のスダレで隠しておりました)。そういう見栄がたたったのでしょう。夜中になって、非常に腹が減ったという。カップラーメンがあるよ、と言うと彼は嬉々として湯を沸かし、自分でラーメンを作りました。そのへビメタ男が、できたカップラーメンを前にしてお箸を持って合掌しながら、
「いただきます」
 ズルズルッとまたたくうちに食べ終わるとまた黙想して、
「ごちそうさまでした」
 ハードロック野郎の意外な一面を見た僕は思わず突っ込んでしまいました。
「きみ、その“いただきます”とか、“ごちそうさまでした”は、誰に対して言っとるんや」
「え?……いや、癖なんだよ」
「一人でカップラーメン食べるときも言うのか」
「言うよ」
「それは、○○製粉とかに対して、“ごちそうさま”と」
「ちがう。この飯を食わしてくれる、森羅万象、神さん、仏さん、農家の人……」
 僕は彼の顔をながめて、“こいつはフォークにいった方がいいな”と思いました。
 さて、あなたも、これからは「神さん仏さん、ごちそうさま」と言うようにしましょう。まさかお義母さんも神に代わって「おそまつさまでした」とは言えないはずです。

 
 
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