プライベート


佐藤真由美

   プライベート

鎌倉で
猫と誰かと暮らしたい
誰かでいいし
あなたでもいい


文庫版 あとがき

 夢に、昔の好きな人が出てきた。今の好きな人に「いやな夢を見たから、一緒に寝ていい?」と言うと、手をつないでくれた。
 夢でも会いたかったはずなのに、「いやな夢」なんて思ったので驚く。三年前、わたしは初めての短歌集のあとがきで嘘をついた。許してなどいない。許せたら、いいなと思っただけだ。好きでい続けることと、許さないでいることは同じかもしれない。
 そうか、愛されていないことがいやだったんだ……と、あたたかい手を握りながらふと気づく。夢に出てきた彼を、もう好きじゃないし、憎んでもいないと今は思っている。
 それも数年後から見たら違うのかもしれないけれど、この文庫が文庫化されることもないので「あとがき」はこれでおしまい。

 雑誌の企画でそれぞれ書いた『ひとり旅五景』『同じ船に乗っていた人』は、収録してみると、あたかも『プライベート』文庫版のあとがきのよう。書いたものが、すべてデビュー作のあとがきになってしまうわたしの人生って……などと思います。
『恋する歌音(カノン)』に続いて文庫化を担当してくださった集英社文庫の武田さんには、もうどの男がどのエッセイや短歌に対応するか、全部わかっていそう。『恋する短歌』のショートストーリーもあわせて、謎解きをお楽しみください。

 
 
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